◆狸の童のおはなし

むかしむかし
ある山の奥深くのちいさな村にとてもなかのいい 
じっさまとばっさまが住んでいました。

そとは夕暮れ・・木枯らしがピープーふいています。
「さあむい寒いお外は寒い、はあやく縄なってしまおかの。」
じっさまは歌いながら土間でなわを綯っています。
ばっさまはというと あがりはなのイロリでなにやら煮ています。
「じっさまじっさま もうじっき オナベがグツグツにえますよ。
はあやく なわなってしまやんせ。はあやく しまいにしやしゃんせ。」
ばっさまも同じように歌ってじっさまに話しました。
そして 二人で顔を見合わせ、ハハハ ホホホと笑いました。

トントントン

外で誰かが戸をたたきました。
「おんや こんな夕さ(夕方)にだれかいな。」
じっさまは縄をなう手を休めて言いました。
冬の夜は早く来ます。もう外は真っ暗になっていることでしよう。
「さあて じっさまちょこっと見ておいでな。」
ばっさまはじっさまに言いました。
「そんじゃあ。」といってじっさまは入り口の戸のところに行きました。

「もうし 外の人 こんな夜中になんじゃいな?」
じっさまは戸ごしに 聞きました。
「おら タヌキじゃなかったポンタじゃ。 
道に迷ってしまったけん一晩泊めてくんろ。」
外からは子供のこえで返事が返ってきました。
「道に迷うたちゅうて、こんな夜更けに童(わらし)がどこさ行くつもりじゃ?
さては キツネかタヌキかそれとも何ぞバケているんとちがうか?」
じっさまは そういって戸を開けようとしませんでした。
ばっさまが傍まできて言いました。
「じっさま ええじゃねんか キツネでもタヌキでも、こんな寒い夜じゃ
一晩くれえなら泊めてやりんしゃい。」
じっさまは 戸を少しだけあけました。
そこには寒さでふるえている 一人の子供がたっていました。
木枯らしがふいて、こなゆきもちらちら舞っています。
「こりゃこりゃ 寒かったじゃろ。はよう中にはいりんしゃい。」
じっさまは 思い切り戸をあけました。
ピュー 風が家の内中を飛びまわりました。

「さあさ イロリのそばへ来い。」
ばっさまは 童にそう言って イロリのそばへ連れて行きました。
「あったけえ あったけえ。」
童は手をイロリの火にかざして言いました。
「そうじゃろ あったけえじゃろう。ちょこっと待ってな。じっさまの仕事も
きりがつくじゃろうから、そしたら 芋汁をやるでな。」
「じっさま そろそろ終わりにしなしゃんせ。じっさまの好きな芋汁もできたでな。」
「よっしゃ そんじゃあ 今夜はこんでおしまいじゃ。 あ あ~あ。」
じっさまは大きな背伸びをしてから 土間のなわを片付けました。

・・・・・・

「おまっとうさん。」
じっさまはイロリのそばに来ました。
「さあさ たんと食べれ。」
ばっさまはお椀に芋汁をそそぎ、童に差し出しました。
よほどお腹がすいていたのでしょう。あわてて食べようとしましたが、
熱くて食べられません。
「これこれ そんなにあわてなくてもええじゃ。芋汁はたんとあるでな。
それにな、ほれ こうして 食べるんじゃ。」
じっさまは 童のお椀にフーフー息をかけました。
「ほれ こうすると さめるじゃろ。そうやって 食べろ。」
童はフーフー息をかけながら 芋汁を食べはじめました。
「さあさ じっさまも。」
ばっさまがじっさまにお椀を差し出しました。
「あんがとよ。」
じっさまも芋汁をフーフー息をかけながら食べました。

・・・・・

「食った食った もお食えん。ほれ お腹がポンポコポンじゃ。」
童はそう言ってお腹をたたきました。

ポン! 

童のお腹からはとってもいい音がしました。
「ホホホ うまかったか?」ばっさまが言うと 「うん とってもうまかった。」
「たんと食べたで なんや眠うなってきただ。」
「そうかそうか そんならそこで横になれ。」
じっさまは 童を自分の横に寝かせました。

お腹が一杯になり、温かくなったので 
童はすぐに寝息をたてて寝てしまいました。
じっさまとばっさまは芋汁を食べながら、その童を見てはニコニコしていました。
「かわええの かわええの。」
じっさまが言いました。ばっさまも「うん うん。」うなづきました。
そして 又童の寝顔をのぞきこみました。

と!、

「じっさま じっさま ちょっと見んさい。」
ばっさまがじっさまに言いました。
「どないしたんじゃ?」じっさまが言いますと、
ばっさまは 童のお尻のあたりを
ゆびさして、「ほれほれ このとおり。」
「ありゃりゃ シッポじゃシッポ。」
なんと 童のお尻からはタヌキのシッポが覗いていました。

やさしい じっさまとばっさまで タヌキもついつい安心したのでしょう。
シッポを出してしまいました。が、じっさまもばっさまも そんなことは全然
気にもせず、眺めておりました。
「かわええのう かわええのう。」「うん うん。」
じっさまとばっさまは 幾度となく言いました。

寒い冬の夜のことです。
じっさまとばっさまもイロリのそばで横になりました。
イロリの火は赤々と燃えています。まるで二人の心持のように・・・・

次の朝、タヌキのポンタはガバッとハネ起きました。
あたりをキョロキョロ見回すと、じっさまは土間でぞうりを作っています。
ばっさまはカマドのそばでなにやら炊いています。
「じっさま ばっさま夕べはありがと。オラもう出て行くだ。」
じっさまもばっさまも 驚いて言いました。
「出てゆくちゅうたって どこいくだ?」
「どこって 言っても・・・・・」
ポンタはもじもじしながら答えました。
「お前さえよかっらた ここにずっとおったらええぞ。」
じっさまが言いました。
ポンタは、じっさまもばっさまも自分のことを本当に人間の子供だと信じて
いると思いました。ポンタは じっさまとばっさまに悪いことをしたと思いました。
「おら やっぱり出て行くだ。」
「お前がタヌキだからか・?」
じっさまが 急にこう言ったのでポンタはびっくりしてしまいました。
「おら・・おら・・」
「お前がタヌキじゃろうと本当の子供だろうと、キツネだろうと 、
そんなことはええ。お前さえよければ ここにズッといろ。」
「そうじゃそうじゃ ポンタ ずっとここにいろ。」
ばっさまもこう言いました。

ポンタはあまりのことにオロオロしてしまいました。
こんなやさしいじっさまとばっさまと一緒に暮らせたら
どんなにかいいことかと思いました。
「ポンタ、ポンタ こっちに来い!」
ばっさまが言いました。
「おお ポンタ、ポンタ じっさまへも来い。」
じっさまも 同じように言いました。
ポンタは嬉しくなって、「うん ばっさま。」
と言ってばっさまのひざの上に
行きました。それから じっさまの うでの中に行きました。

こうして
タヌキのポンタはじっさまとばっさまと一緒に暮らすことになりました。

「ポンタや もうすぐたあんと雪が降るぞ。その前に山へ薪を取りに行くで
ついてくるか?」
じっさまが言いました。
「うん おらじっさまと一緒に行く!」
ポンタは嬉しそうに答えました。
「そうかそうか そんならおにぎりをこさえたるの。なんせポンタは
大飯食いじゃからの。 ホホホホホ」
ばっさまは笑いながら言いました。
ポンタは照れくさそうに「へへへへ。」と笑いました。

じっさまは裏の軒の下から薪を背負うショイコを二つ持って来ました。
それから 腰にはナタをつけました。
「おにぎりはポンタが持っていけ。じゃが 途中で食べてしまうなよハハハハハ。」
じっさまも楽しそうに言いました。
なにせ じっさまとばっさまにはポンタという可愛い子供が出来たのです。
こんな嬉しいことはありません。
ポンタもこんなにやさしいじっさまとばっさまと一緒に暮らせるのです。
とても幸せな気分でした。

「さあ たあんとおにぎりも作ったで、ポンタほれちょっくら重いぞ。」
ばっさまは たくさんのおにぎりをポンタに渡しました。
「ばっさま そんじゃいって来るぞな。」
ポンタは言いました。そして 早足で外に出ました。
「じっさま 早くいくぞ。」ポンタははりきっています。
「あわてるな あわてるな。」じっさまは 笑いながら言いました。
「そんじゃ ばっさま行って来るでな。」
「おうおう じっさま気をつけてな。」
ばっさまは 外に出て二人を送り出しました。

時々木枯らしがピープー吹いてきて、まもなくたくさんの雪が降ることでしょう。
遠くの山々はもう真っ白に雪化粧をしています。
雪が降り始めるとこのあたりは全部雪の中に埋もれてしまいます。
ばっさまに見送られ二人は山へと向かいました。

じっさまとポンタは話しながら山道を歩いています。
「じっさま 今日はたあんと柴かれたな。」
「おうおう たあんとかれた。ポンタがようがんばった。」
「じっさま 今日はたあんと薪をひろったな。」
「おうおう たあんと拾ったぞ。ポンタがようけ拾ったわい。」
「じっさまじっさま、ばっさまのこさえたおにぎりうまかったな。」
「おうおう うまかった。ポンタはようけ食べたワイ。」
「じっさま じっさま オラキノコがいっぱいあるとこ知ってるだ。
ポンポコ谷の近くだけんど、ばっさまにとっていってやろかの。」
「ポンポコ谷まではちと遠いぞ。」
「近道があるだ。じっさま いこ。雪が降る前が一番うめえぞ。」
「そんなら いこまいか。」
じっさまとポンタはポンポコ山へと向かいました。

ひとつ山を越え谷に入るところで、突然!
ガラガラガラ!ものすごい音とともに山の中ほどから岩が崩れてきました。
「あっ!ポンタあぶねえ!。」
じっさまはポンタを自分の腕の中に抱え込み、
近くの大きな切り株の後に隠れました。
ゴロゴゴロ!
岩はじっさまのそばを転げ落ちていきました。

「じっさま ありがと オラびっくりしただ。! じっさま どうしただ?」
じっさまは 足をおさえて痛そうにしています。
岩崩から逃げる時にどうやら足をくじいてしまったようです。
「じっさま オラ誰かよんでくる。少しまっててくれ!。」
ポンタは、そう言って 走り出しました。

ポンタは走りました。ひとつ山を戻り、二つ目の山を越え、
ようやく村への街道に出ました。もう少しすると夕方になってしまいます。
ポンタは少しあせっていました。
「ああ じっさま 大丈夫かの。誰かいないかの。」
一本松の近くまで来た時です。
近くの畑に男の人と女の人が野良仕事をしていました。
「ああよかった。お~い そこの人、オラのじっさまが 山で足をくじいてしまった。
たのむで 助けてくんろ!。」
その声でしゃがんで仕事をしていた二人は立ち上がり、ポンタの方を見ました。
そこには タヌキがいるではありませんか。
「やや! タヌキじゃタヌキ! おっとう、おらたちをだまくらかすつもりじゃろ。
つかまえてタヌキ汁にしよまいか。」
「そうじゃ そうじゃ そうしよう!」

二人は仕事をやめてポンタのほうへ走ってきます。
これにはポンタもびっくり、慌てて逃げ出しました。ふたりは追いかけてきます。
ポンタは一本松まで逃げてきました。と、そこにはお地蔵様がいらっしゃる。
ポンタはお地蔵様に言いました。
「お願いじゃ、おらをかくまってくれ。」
ポンタはお地蔵様の後に身を隠しました。

そこへ二人がやってきました。
「どこいった?確かこの辺にきたと思ったが・・」
「あっちじゃ あっちを探そう。」
ふたりは 別の方に走っていきました。
二人が遠ざかったのを見て、ポンタはお地蔵様の後からでてきました。
「ああ こわかった。お地蔵様 ありがとう。けんど だれもオラの言うこと
信じてくれん。お地蔵様オラどうしたらええんじゃ。オラ タヌキだけんど
オラ タヌキじゃねえ!」
「こうなったら オラがじっさまを・・・」
ポンタはまたじっさまのいる山へと走っていきました。

ゴ~~ン

寺の鐘の音が聞こえてきます。あたりは次第に暗くなり始めました。
ばっさまが お地蔵様のところまでやってきました。
「心配じゃのう。さっき村の衆がタヌキジャタヌキじゃと騒いでおったが、
じっさまがどうの、足がどうのと聞こえたが・・どうも心配じゃて、
お地蔵様、どうぞじっさまとポンタをお守りくださいな。」
ばっさまがお地蔵様にお願いをしている時です。
ポンタがじっさまをせなかにおぶってやってきました。

「ポンタ!どうしたんじゃ?じっさま!どうしたんじゃ?」
ばっさまは驚いて二人に尋ねました。
「ばっさま、ああ助かった。じっさまが足をくじいて歩けんのじゃ。オラ、
村の人に助けてってたのんだけんど、オラガタヌキじゃけん、誰も信じてくれん。」
ポンタはそう言ってじっさまを背中におぶさったままその場に倒れてしまいました。
「こったら小せえ体でわしをここまで背負ってきたんじゃ。えらかっらろうの。」
「そうかそうか、ポンタようここまでがんばったのう。」
「オラくやしい オラタヌキじゃども、オラタヌキじゃねえ!」
ばっさまも 目に泪をうかべて言いました。
「そうじゃそうじゃ お前はじっさまとばっさまの童のポンタじゃ。」

いつしか先の百姓の男の人と女の人が、村人達とやってきていました。
「じっさま、ばっさまかんにんな。
タヌキがオラたちをてっきりだまくらかすと思ってな。」
「ポンタ かんにんな。もうお前のことをタヌキなんていわねえからな。」
「さあ じっさま、オラの背中におぶされ。家さ帰るだ。」
こうして ポンタ達は家に帰ることになりました。

ポンタは少し歩いてから、ふと立ち止まりお地蔵様のところに戻りました。
そしてお地蔵様に手を合わせ、「お地蔵様、ありがと。」
お地蔵様は何も言わず、ただ だまって立っています。
あたりは、夕闇がせまってきました。

・・・・・

「ポンタ、ポンタじっさまこい。」
「うんうんじっさま。」
「ポンタ ポンタばっさまへこい。」
「うんうん ばっさま。」
家の中のイロリのそばで、じっさまとばっさまにはさまれ、ポンタは
うれしそうにあっちへいったり、こっちにきたりしています。
じっさまもばっさまも笑いながらポンタをかわるがわる抱いています。

三人はこうしていつまでもいつまでも幸せに暮らしました。

おしまい

◆たぬき地蔵のおはなし

むかしむかし

ポンポコ山にポン吉と言うタヌキが棲んでいました。
ポン吉はとてもいたづら好きで、街道にでてはいつも人間を
驚かしたりダマしたりしていました。

ある日のこと、ポン吉は一本松のある峠にやってきました。
すると そこにはお地蔵様があって、なにやらお供えをしてる人がいます。
ポン吉は草むらからその様子をじっと見ていました。

人間が去ったあと、そのお地蔵様のところに行くと、そこには
美味しそうなお菓子がおいてありました。
ポン吉はそれをパっと口の中にほうり込みました。
「うめえ!こんなうめえもん食ったことがねえ。」
「お地蔵様はこんなうめえもんくうとるのか。よっしゃそれじゃあ
オラがお地蔵様になって、いっぺえうまいもんくうたろ。」

ポン吉はそのお地蔵様を近くの川にすててしまい、
自分がお地蔵様にバケてしまいました。
そしてそのお地蔵様がおった場所になにくわぬ顔でチョコンとたちました。

どのくらいたったことでしょう。いいかげん待ちくたびれたから、やっぱり
やめようとした時です。村の方から、一人の男の人がやってきました。
どうやらこれから遠くへ旅に出る様子です。
男の人はお地蔵様の傍にきて、「お地蔵様、どうぞ道中が無事に過ごせます
ように。」とお願いをしました。そして道中で食べようとしたおにぎりの一つを
お供えをして、旅に出ていきました。

ポン吉はお腹がグっとなるのをがまんをしていました。男の人の姿がみえなく
なるやいなや、元のタヌキの姿に戻り、「やあ これはおいしそうなおにぎりだ。
うまくいったぞ、うまくいったぞ。」
といってむしゃむしゃとおにぎりを食べてしまいました。
「こんなええことはない。いっぺんやったらやめられないな。」
「もうちょっとなんかくいてえな。早くだれかこないかな。」
そう言いながら、キョロキョロしていると、峠の下のほうから、おばあさんが
やってきます。ポン吉はまたお地蔵様にバケました。

おばあさんは杖をつき、「えいこらしょ。」と言いながら、
お地蔵様の傍までやってきました。
「ああ、やっとこさここまで登ってこれたわい。あとすこしじゃが、
のどがかわいた。お地蔵様のそばで、ミカンでも食べて一休みじゃ。」
こういいながらおばあさんは、お地蔵様の傍に腰をおろし、
懐からミカンを取り出しました。そうしておいしそうに食べ始めました。
ポン吉はそれを見ていて、喉がゴクゴクといい始めました。
ミカンを食べをわったおばあさんは、「よっこらっしょっと。」と言って立ち上がり、
「お地蔵様も一つ食べなさるかね。」「おひとつどうぞ。」
おばあさんは、ミカンをおいて、村の方に「えいこらしょ。」といいながら歩いて
いきました。

「やったやった。うまくいったぞ。」
ポン吉は大喜びです。甘くておいしそうなミカンをペロリとたべてしまいました。
「よおし、お腹がすいたらこうすればええんじゃ。」
おなかがいっぱいになったポン吉は、もちまえのいたづら心が出てきました。
「おなかも一杯になったし、よおし今度は人間どもをおどろかしてやろ。」
ポン吉はまたお地蔵様にバケました。そして知らぬ顔をしてたっていますと、
峠のしたのほうから男の人がやってきます。それを横目でみていますと、
その人はペコリと頭をさげて通り過ぎようとしました。
これではおどろかそうと待っていたかいがありません。
ポン吉は大きな声でその男の人に言いました。
「まてまてまてえ。」

おとこのひとは驚いて立ち止まりました。
あたりをキョロキョロみまわしていると、
お地蔵様が突然!
「なにかお供えをしろ!。」といったとみるや、それは大きな鬼になりました。
男の人は急にあらわれた鬼にびっくりして、「ひえ~~~~。」と村のほうに
逃げていきました。

ポン吉は元のタヌキに戻って思いっきり笑いました。
あまりの男の人の驚きようがおかしかったからです。
お腹をかかえてワハハと笑っていると、村のほうから誰やら又来ます。
「よおし!もう一度おどろかしてやろっと。」
ポン吉はまたお地蔵様にバケました。

やってきたのは和尚様でした。その後にはさっきの男の人がいました。
男の人は和尚様の背中から、お地蔵様のほうを指差していいました。
「和尚様。あのお地藏様は本当は鬼です。
もう少しで私は食べられるところでした。お願いです退治してください。」
そう言って男の人は村へ逃げ帰りました。

和尚様はお地蔵様の傍まできてじろじろと見回しました。
ポン吉はばれてしまうのが恐ろしくてじっとしていました。
和尚様はそのお地蔵様をみて一目でタヌキがバケていると見破りましたが、
少しばかり懲らしめてやろうと思い、
「どれどれ、ちょっとかわったお地蔵様じゃ。
本当のお地蔵様か調べることにしよう。」
「私がお経を唱えると本当のお地蔵様ならシッポが出てくるはずじゃ。」
そういって和尚様がお経を唱えるふりをすると、ポン吉はこれは大変と思い、
思わずシッポを出してしまったのです。

和尚様はしてやったりと思いましたが、さらにこう言いました。
「どうやら本当のお地蔵様のようじゃ。だが今一度確かめてみようかの。
本当のお地蔵様なら私がお経を唱えて、
{えっへん}と言うと{おっほん}というはずじゃ。」
ポン吉はここでバレたら一大事と思い、
和尚様がお経を唱えるのを必死で聞いていましたので、
ついついバケていることを忘れてしまいましたからタヌキにもどってしまいました。

「えっへん!」
和尚様はおおきな声でいいました。ポン吉はあわてて答えました。
「おっほん!」
ポン吉は和尚様と同じくらいの大きな声でいいました。
その拍子に頭の上にのせていた木の葉はヒラリと下に落ちました。

「ははは いたづらタヌキめ。」
和尚様は今度は本当にお経を唱えました。
すると、ポン吉の体はピクリとも動かなくなりました。
バレてしまって逃げようとするのですが、ぜんぜん体がいうことを聞きません。
「いたづらタヌキよ、お前は本当のお地蔵様になってしまったぞよ。
わははははどうじゃ動けまい。
お前が今まで悪さをしてきただけ、いい行いをしたら 解いてしんぜよう。
よいな、ははははは。」
和尚様はそう言って立ち去ってしまいました。

ポン吉は困ってしまいました。自分の体がぜんぜん動きません。
「ああ困った。どうしよう。このままでは 本当にお地蔵様にされてしまう。」
「それに このままだと人間にタヌキだとわかってしまう。和尚様はいい行いを
したら戻してくれるって言ったけど、どうすればええのかの。」
「ああ こんな悪さをしなければよかった。」
ポン吉は今までしてきたことを後悔しました。

こうしてポン吉は夜を迎えました。
松の木の枝の間からお月様が、顔を出しました。
ポン吉はお月様に向かって尋ねました。
「お月様おらどうすればええんじゃ?教えてくれ。」
でもお月様は何も言いません。ただ黙ってみているだけでした。

{うぇ~~ん、うぇ~~ん}

何処からか赤ん坊の泣き声が聞こえました。
その声はだんだんとこっちに近づいてきます。
村の方から一人のおばさんが、赤ん坊を背中におぶってこっちにやってきます。
「困ったねえ、ちっとも泣き止んでくれないね。おおよしよし。
お地蔵様どうかこの子が泣かないようにして下さい。」
おばさんはポン吉いえ、お地蔵様にこう言いました。
どうやら本当のお地蔵様にみえるみたいです。
ポン吉は少しは安心しました。
それに 余りにもその赤ん坊が可愛かったので、おもわずベロベロバーっと
大きな舌を出しました。

それをみた赤ん坊は大きな声で「キャッキャ。」と笑いました。
これにはおばさんもびっくり、
「あれ!この子が泣き止んだ。そればかりか笑い始めた。
お地蔵様さっそくおらのお願いをきいてくれてありがとうございました。」
おばさんは喜んで家のほうに帰っていきました。

ポン吉もなんだかホっとしました。
これを見ていたお月様が言いました。

{いいこと 一つ よかったね。}

つぎの日は、朝からくもっていました。
雲が次々と流れていきます。
ポン吉は動くに動けず、お地蔵様の姿のままでじっとしています。
「お~い雲よおらをたすけてくれ。」
でも雲はなにもいわず次々と流れていきます。
しばらくして、今度は黒い雲が流れてきたかとおもうと、
ピカピカピカゴロゴロゴロ!
カミナリが鳴りはじめました。そして雨がザア~っと降り始めました。
「こまったな ずぶぬれになってしまう。でも動けないし、困ったな。」
ポン吉は泣き出したくなりました。

そんな中を一人の男の人が通りかかりました。雨が降り出してずぶぬれです。
ゴホンゴホンとせきをしながら「こまったなあ。」と言いました。
ポン吉はかわいそうになって、「この笠をかぶっていきなさい。」
と言ってしまいました。
男の人はちょっとびっくりしましたが、
よく見るとお地蔵様の頭に笠があったのでそれを自分の頭にかぶり、
「お地蔵様ほんの少しお借りします。後で必ずお返しにあがります。」
そういって雨の中をかけぬけて行きました。

いつしか雨も通り過ぎていきました。先ほどの雲が言いました。

{いいこと 一つ よかったね}

雲が去り、いつしかお日様が出てきました。
ポン吉は少しばかり暖かくなりました。そう 体も心も・・・・
でもやっぱりお地蔵様のままです。
「お~い お日様よ~。」
ポン吉はお日様に向かって言いました。
「おら 早くもとの姿にもどりたいよ~。」
でも お日様はなにも言いません。

「きゃあ~~~っつ。」

峠の下のほうで叫び声が聞こえました。
ポン吉は何事かと思いそのほうを見ようとしましたが、
体が言うことをきいてくれません。仕方なくじっとしていると、
女の人が走ってきてポン吉の後に隠れました。
「お地蔵様、助けてください。犬が追いかけてきます。お願いです。」

ワンワンワン 
犬がポン吉の前まで来ました。
実はポン吉も犬は大嫌いです。逃げ出したいのですが、逃げれません。
{鬼になっておどろかせたらなあ}と思いました。すると!
ポン吉のいえ、お地蔵様の後からこわ~い鬼が現れて、
「ゴオオオオオオ・・・・・」
それを見た犬はびっくりして、キャンキャンと鳴いて逃げていってしまいました。

「お地蔵様、ありがとう、ありがとう。」
女の人はお地蔵様に何度も頭をさげ、村へと帰っていきました。

これを見ていたお日様が言いました。

{いいこと ひとつ よかったね}
{まもなく、まもなく いいこといっぱい}

暖かいお日様の光の中で、ポン吉はうとうと うたたねをしていました。
と、 なにやら村の方向から人間たちのこえが聞こえます。そしてそれは
だんだんこっちに近づいてきます。ポン吉はあわてました。
逃げようとしたのですが、お地蔵様にされていることに気が付きました。
「ああ もうだめじゃ。村の人たちがおらをやつけにくるんじゃ。
うえ~~~ん。もうだめじゃ お日様助けてくんろ。」
必死になってお日様にたのみましたが、お日様は知らんふり・・・・

村の人たちが次々とお地蔵様の前にやってきました。
「お地蔵様、夕べはほんとに有難うございました。
お陰で赤ん坊も泣かなくなりました。お地蔵様、これはほんのお礼です。」
それは 夕べ子供を背中におぶっていた あのおばさんでした。

「お地蔵様、先ほどは笠をありがとうございました。お返しに参りました。」
こう言ったのは、先ほどの男の人でした。男の人は、笠をポン吉の頭にしっかりと
かぶせて言いました。「これはほんの気持ちです。」

「お地蔵様、もう犬は来ないね。本当に危ないところありがとうございました。」
よく見ると、先ほど助けた女の人です。
村の人たちも「ありがたや、ありがたや。」と言いながら、お地蔵様の前に
お菓子やら、ミカンやらを一杯供えました。
そして、「これからもどうぞお助けください。」と言って村へ帰っていきました。

ポン吉はとっても幸せな気持ちでした。
今まで、人を驚かせていたときは、いつもビクビクしていましたが、今は違います。
ポン吉はこのままお地蔵様でもいいやと思っていました。
そこへ、隣村の法事の用が済んだ和尚様が戻ってきました。
「ほほう、タヌキよ お前は随分の良い行いをしたみたいじゃな。
ようし 元にもどしてあげよう。」

和尚様はお経を唱えました。
すると、今まで動くに動けなかった体がスっと動くようになりました。
「和尚様 ありがとう。 もうぜったい悪さをしないよ。」
「そうかそうか よくわかっただろう。 
いい事をすれば その分自分のところに戻ってくるんじゃな。
よしよし、そのお供えはお前のものじゃ それをもって山に帰るがよい。」
和尚様はニコニコ顔でポン吉に言いました。
「和尚様 ありがとう。 もうぜったいいたづらはしないよ。ありがとう。」
こう言って、ポン吉は山へ帰っていきました。

おしまい

③ぽんぽこやまのおはなし

ポンポコ山には3つのお話があります。ポンポコ島物語とは別のおはなしとなります。

私が最初に書き始めたのは創造物語で、美濃加茂市近郊の題材を元に物語を書きましたが、特にこのタヌキを使っての題材を気に入って色々イメージを膨らましています。「ポンポコ」の4文字を変化させると、ポンポコ・ポポコン・ポコポンなどなど色々に使えます。ただ、自分でもどれがどれだかわからなくなる時もあります。それが又楽しくて思考を膨らませています。<<ポンポコ島>>にはまだいろいろありますので、順次こちらに移し替えてきます。工房音絵夢ingの公式サイトは

http://ne-ming.com/     です。

②ポンポコ島伝説第二巻

このポンポコ島伝説第二巻も、第一巻同様ロールプレインゲームの様な感じで作り上げていますので、WORDPRESSにもちこめません。アイコンクリックか、下のURLからお入りください。

https://ne-ming.com/ponpokodensetu-2/ponpokodensetu-2puroro-gu.html

①ポンポコ島ものがたりその2

このポンポコ島ものがたりも 第一話・第二話・第三話・・・と進んできました。
いよいよ 物語の佳境に入っていきます。

余談ですが、タヌキの子どもが一度に生まれる数は平均3~5匹だそうです。
オス1:メス0.36の割合でオスの方が多く生まれるとのことです。
8日目くらいで目があき、20日ごろからは歯もはえてきます。1週間がすぎると
だんだん足腰がしっかりしてきて、よちよち歩くようになります。
おかあさんは、赤ちゃんをくわえて運びますが、その時おしりや胴を咥えるので、
あちこち 頭をぶつけてしまいますがぜ~んぜん気にしません。

タヌキのお父さんは理想的な父親像といえるでしょう。
まず、赤ちゃんが生まれるとすぐにかけつけ、一緒になめてあげます。
産後3日くらい外に出られない母親に、一生懸命ご飯をはこびます。
家族が中にいる時は巣の外で見張りをし、物音がすればすぐ家族の所へ
かけつけます。お母さんが食事に出ている時はおなじ格好で子どもを抱いて
あげます。離乳食を始めた子どもたちにえさを運んであげます。おかあさんは
産後の体力回復に精一杯なのです。
あかちゃんがうんこをしそうになると、お尻をなめてあげ、出たうんこは食べてしまいます。
(お食事中の方は読まないで下さい。)
幼児期をむかえた子どもたちの相手はお父さんなのです。
生まれて1ケ月もすると、体毛も変化し、そして3ケ月もすると親と同じくらいの体格になり、
9~11ケ月で親タヌキとなります。
すこしばかり余談が長くなりました。

お話はいったん今から3年ほど前にさかのぼります。
そうです ポコやコポが生まれた時までもどります。

では はじまりはじまり

ポンポコ島ものがたりその2出会いそして

【第一話】

{おぎゃ~おぎゃ~}本当にこんな風に泣いたのかどうかはわかりませんが、
ポコンポ山の統領に待望の二世が誕生しました。

「おおでかしたでかした。よくがんばったな」
「あなた、わたしうれしい。こんな可愛い子どもが、二人も生まれるなんて。」
「うんうん、とても元気そうな男の子じゃ。早速名前をつけねばならんの。」
「ええ、 ねえあなた この子達の名前私がつけてもいい?」
「うん? いいとも なにか良い名前があるのか?」
「ええ、私決めてたの。男の子だったら ポコ、コポ、女の子は生まれなかったから・・・、
でも もし生まれていたら ポポ」
「ポコ、コポか。 うん とても良い名前じゃ。よし!ポコとコポに決めたぞ。」
「あなた・・・」
「わっはっは 今日はとても気分が良い。 早速 若頭達に 誕生会の準備をさせねば。」
「でも あなた ポコとコポは今生まれたばかりよ。」

「ははははは 勿論誕生会は7日後じゃ。 で、それまでおまえは体を早く回復させるのじゃ。
おれが一杯食べ物を取ってきてやるからな。 早く元気になってくれんと、おれも寂しいからな。」
「あ あなた・・・。」
「おいおい 何を泣いておる? そもそもわれら タヌキの一族はもともとは かかあ殿下じゃ。
女のおまえがそんなふうではわれら一族の将来は不安ぞ。」
「まあ なんてことを・・・」
「ははは ゆるせ。本当に今日は気分が良い。 ああ 楽しみじゃ。早く誕生会にならぬかの。」


統領はとても良い気分でした。
1日がまたたく間に過ぎ、二日目となり、三日めとなりました。統領は妻のためにせっせと
食事を運びます。そしてポコとコポの世話をこまめにやっておりました。
その顔はほころんでいて、時折妻や若頭にもっと威厳をもつようにと言われるのですが、
その顔は変わりません。ポコ、コポはこうして幸せな日々を過ごしておりました。

つづく

【第二話】

「統領、大変です!南の方角からなにやら怪しげな雲がやってきます!」
「む!よし皆を集めよ!女・子どもは1つ場所に固まるのじゃ!」
「注意を怠るな!」「お前達は 洞穴の入り口を、お前たちは向こうがわじゃ!」
適確に次々と統領は指示を出していきました。
このときにはまだ誰もキツネ族が襲ってくるとは思ってもいませんでした。


やがてその黒い雲はポコンポ山を覆い尽くしました。 そして!
その黒雲の中から キツネ族の戦士たちが降りてきて、アッとおもう間もなく
統領たちを取り囲みました。
「お前たち、ここから黙って出て行け!今日からはこの山は俺たちが取り仕切る。」
「何だと! ここはもともとわれらのすみか、どうしてお前たちにわたさなくてはならん!」
「そんな 強がりを言ってると、皆殺しだぞ!」
「そんなことは 絶対にさせん!」
「まだ そんなことを言うのか。おい!やろうども こいつら全員やっつけろ!」

とうとう戦いが始まってしまいました。
統領はじめタヌキ族は勇敢に戦いましたが、何分準備不足の上、人数もいません。
じわじわと 攻め込まれていきました。
「このままではだめじゃ!たのむ ポコとコポを連れ出してくれ!」
「おやじさま!」
「せいいっぱいくい止めるから、その間に 頼んだぞ!」
統領は勇敢にもたった一人でキツネ族を相手に戦いました。
「3年後じゃ!このことは3年たったら話してやってくれ!」
統領はこういい残し、戦いの場を離す為 敵の大将めがけて走りこんでいきました。

つづく

【第三話】

それは 激しい戦いでした。

でも いかんせんあまりにも急なことでしたので、タヌキたちは戦いに敗れてしまいました。
統領とその妻はとらわれの身となって地下の牢に閉じ込められ、
その他の者たちはキツネたちの奴隷としてこき使われました。
ポコンポ山はもはや完全にキツネ族の山となってしまいました。キツネたちはさらに
自分たちの住処を増やすべくこのポンポコ島をのっとるべき手はずをしていましたが、
タヌキ族の風水師であるポポンが思い切って、ポコンポ山とコポンポ山の間に深い溝を
造ってしまったので、島全体は救われました。

「あなた・・・これからどうなるのでしょう?」
「うむ こうしてとらわれとなった今どうする事も出来ぬ。あとは ポコたちに託すのみじゃ。」
「でも 皆が奴隷となって働いているのを見ると、とてもつらくて・・・いっそのこと私たちを
殺してくれればよかったのに・・・」
「そこは キツネどものずるがしこいところじゃ。わしらを殺せば、絶対に他の者たちは
服従をしないだろう。わしらを生かせておく事によって、皆をうまく使いこなせるわけじゃ。」
「お前にも苦労をかけるの。わしの妻にさえならなかったら、お前はあのポンポコ山で楽しく
暮らせただろうに・・・」
「何を言うのあなた。私は好きであなたと一緒になったんです。共に苦労することなんか
何でもありません。ただ・・・別れてしまったポコとコポのことが気がかりで、いったい
今ごろどうしているのか、そればかりが心配で・・・」
「そうじゃのう わしもそのことが大変気になっている。
じゃが、わしの片腕に頼んだから、今ごろはきっと元気に暮らしていると思う。
統領としての修練や、戦士としての修行をきっちりやっていることじゃろう。」
「二人が ここにやってくるのをじっと待つ事にしよう。きっとやってくる!わしの子どもじゃ。
3年たったら必ずここに来るだろう。」

統領とその妻はこれからの長くてつらい毎日を互いになぐさめあいながら過ごしておりました

つづく

 

 

★★★本来はここからポン助と、ポコ・コポたちと同時進行で物語が展開するのですが、ここでは無理なので別々に行動することとします。〇4の1ポンス助のはなし〇4の2ポココポのはなしとします。★★★

【第四話】④の1ポンスケのはなし

ポン助がりんごに化けて乗り込んでいるとは知らず、キツネ達の黒雲は一路ポコンポ山へと向かっています。深い谷間を越え、いよいよポコンポ山が見えて来ました。

ポン助は内心ドキドキしていました。キツネたちを懲らしめてやろうと思いたって来たのはいいのですが、具体的な作戦があるわけではありません。

どうしたものか思案をしている間に とある大きな洞穴の前に着きました。キツネたちは、ただもくもくと荷物を運び込んでいます。やがてポン助を乗せた台座を運び始めました。何処へつれて行こうとするのか、ポン助は薄目をあけて見ていました。

洞穴の中はいくつもの部屋に別れていて、その一つ一つに番人が立っていました。
と!突然、叫んだものがいます。
「おい!あの娘はどこにいった?!」
ポン助はドキっとしました。地上について、つい気がゆるんでしまい、まんじゅうを娘に化かしていることを忘れてしまったからです。でも、キツネたちはそんな事は知りません。きっとどこかへ逃げてしまったものと思い込み、あちこちを探し始めました。

でも見つかるわけはありません。もともとそんな娘はいなかった訳ですから・・・・
「おい、ここにはいない。お前たちも一緒にさがせ!」
キツネたちは番人ともども、他の場所へと探しにでかけました。
ポン助の乗った台座はぽつんと部屋の前に置かれています。
あたりをそ~っと見ましたが、誰もいる気配はありません。
ポン助は元の姿に戻り大きな背伸びをしました。
「あ~あ、やっと自由になれたぞ、ちょこっと足腰が痛いけどまあ大丈夫じゃ。けんどこれはえらいことになっちゃったなあ。」
ポン助はまるで人事のように言いました。もともと、とても気楽な性格のポン助でしたので、今の自分のことなぞ、そう深刻には思っていません。
「よ~し、今の内にあたりを調べておこう!」

部屋には食べ物を集めた部屋、武器のおいてある部屋、何か人間の着物みたいなのが置いてある部屋、など一つ一つ別れていました。ポン助は部屋の食べ物は全部石に化しました。それから武器は全て使えなくしてしまいました。人間の着物みたいなものはすべて1つの大きな袋にしてしまいました。

そうやって部屋の一つ一つを使えなくしていきました。
最後の部屋についた時です。
部屋の中から声がしました。
ポン助はそ~っと中を覗き込みました。

 

 

【第四話】④の2ポココポのはなし

コポンポ山の迷宮を何とか通りぬけてきたポコとコポは、ついにポコンポ山へとたどり着いたのでした。

初めは二人ともぎこちなくしておりましたが、そこは兄弟です。すぐに仲良くなりました。{いっしょにおやじさまとおふくろ様を助けるんだ!}
その意気込みは次第に強くなってきました。

長い迷路を通り抜けうっすらとした光に誘われるようにして出たところはなんと ポコンポ山のどこかの洞穴でした。あたりを見回しながら進んでいくと、話し声や叫び声などが聞こえてきました。コポは仙人タヌキからもらった”ねむの木の枝”を使おうとしましたが、「コポ、まだ早い!もう少し後に使おう。」「うん その方がいいね。」

上の穴に続くのか、1つの通路がありました。二人はその通路に入り込みました。


通り抜けて出たところは1つの部屋でした。先ほどまで騒がしかったのに今は誰もいないようです。二人はここで今後のことを打ち合わせる事にしました。


「さて これからどうする?」
「まず 親父様とおふくろ様のいる場所をみつけるんだ。助け出してから次の行動に移ろう。」
「そうだね そうしよう。で、どっちへ行く?」
「この部屋はどうも一番離れたところみたいだ。順に探すしかないみたいだ。ここまで来たんだ。あと少し 頑張ろう!」
「うん ポコ 頑張ろうね。」

【第五話】

「君たちは どうしてここにいるんだい?」
 ぎょっ!
ポコとコポは急に話しかけられたのでびっくりしました。
振り向くと そこには 一人(1匹)の仲間がいるではありませんか。
でも どうして・・・ポコたちは不思議に思いました。

「君はだれだ?」
「おいらか おいらは ポン助と言うんだ。実はおいらは雲にのって
ポコポン山からやって来たんだ。で 君たちはどうしてここに?・・・」

ポコとコポは今までのいきさつをポン助に話しました。
「ふ~ん そういうことか。 よしわかった! おいらも一緒に探してやろう。」
「おいらも キツネ族を懲らしめる為にここに来たんだから。」

なんと たった一人でここまで来たのです。ポコとコポは このポン助の行動に
びっくりしました。
で、ポン助をみると、何としっぽが少し赤いではありませんか。
ポコはポン助に尋ねました。
「君の おじいさんの名前は? ひょっとして ポポン?」
「あれれ どうして知ってるんだ? そうだよ おじいちゃんは ポポンと言うよ。」


ポコとコポはお互いに目配せしました。{まちがいない ポン助は風水師だ}と
それならば!
ポコはポポンからあずかったあるものを 思い切ってポン助に投げつけました。
「何をするんだ!」
ポン助は驚きました・・・・・そして!「くしゅん ごほん !わ~~~これはなんだ。」
ポコはポン助になんと 唐辛子をつぶしていれてある袋を投げつけたのです。
でも これには 訳があるのです。

コポポン山でポポンから言われていました。「もしポン助が見つかったらこれを
投げつけよ」と、そうすれば ポン助は本当の風水師になれると・・・・
ポン助のシッポはあまりのくしゃみで 顔を真っ赤にした分だけ よけいに
赤くなってきたのです。
お陰で 風水のパワーがあがってきました。

ポコは事情を話しました。ようやくくしゃみがおさまって ポン助は涙を流しながら
「わかったよ それならしかたがないや。 でも くしゅん・・・」
ポコたちはポン助が少し可愛そうになりました。
「ごめんね 」
「いいよ いいよ 気にしないから・・」
「ポン助、これを預かってくれ。」
コポは ポポンから 預かった 薬草と ねむの木の枝を 渡しました。
「おお ねむの木の枝か こいつはすごいや これがあれば キツネ族なんか
一眠りだ。よ~~し 早速 でかけよう。 で どこに とらわれているんだい?
えっ! わからない それじゃ 風に聞いてみるよ。
お~い 風よ ポコとコポのおやじさまたちは どこにいる?」


<風>はこたえました。
「も1つ上の洞穴の中、一番奥の 魔王のそばさ」

<風>が教えてくれたとおり、1つ上の階はさらなる部屋になっていました。
真中の部屋は扉があっておいそれと入れそうにありません。
3人いえ3匹は右側の部屋へと入り込みました。
その部屋は 牢屋になっていました。
中は薄暗く、だれぞがいるのかどうかもわかりません。
ポコは小さな声で言いました。

「だれかいるかい?」
薄暗い中でなにやら動く気配がしました。
「だれ?」

「お前は誰じゃ?」
牢の中からとてもしわしわの声がしました。
「おいら ポコと言うんだ。おいらーーーー」
「なに! ポコ? 本当にポコか?」
「そうだよ ポコだよ コポも一緒だよ。」
「おお なんと! 待ったかいがあった。おい!お母さん ポコとコポじゃ。
いったとおりだろ。来てくれたんじゃ!。」
「で・では おやじさまとおふくろ様?」


「どんなにこの時を待ちわびた事か、おお やっぱり来てくれた。・・・」
「おい おかあさん。来てくれたぞ ポコとコポが おかあさん。」
「おふくろ様は どうしたんじゃ?」
「ちょっと 具合が悪くなってな。 おい!おきろ ポコだぞ!コポが来てくれたぞ!」

でも おふくろ様は いっこうに 起き上がってくる気配がありません。
「おふくろ!」
コポは 大きな声で 言いました。
「ポコ この薬を—」と言って ポン助が薬草を手渡しました。
「おやじ 早くこの薬草を おふくろ様に飲ませておくれ」
ポコは牢の格子の間から おやじさまに薬草を手渡しました。


薬草をのんだ おふくろ様はどうやら 気がついたみたいです。
ポコとコポはひとまずほっとしました。
「この牢の鍵は?」
「隣のへやのキツネ族の大将が持っておる。」
「よし!では取ってくる。」
「親父様 おふくろ様 いま少し 待ってておくれ すぐ助けてあげるから。」
「おお たのむぞ。」

ポコとコポそれに ポン助は この牢屋をあとにし 大将のいる 中央の部屋へと
向かったのでした。

つづく

 

【第六話】

そこでは 数人のキツネ達が 食事をしていました。
その周りには タヌキの子どもや女が座らされていました。

ポコやコポがいきなり入ってきたので、キツネたちは驚いています。

「な なんだ!お前たちは?」
大将と思われる傍の男がさっと身構えていいました。
大将は と見るとなんと シッポが赤いのです。{きっとこいつが風水を使うキツネに違いない}
ポコたちはそう思いました。
「おいらの 親父様とおふくろ様を助けにきた!」
「なに? するとお前はあのタヌキの子供か?」
「そうだ! やい よくも親父様達を苦しめてくれたな! さあ さっさとここを出て行け!」

「なに 出て行け? ふん 何を小ざかしい事を言ってるんだ。お前たちこそ出て行け!
さもないと お前らを残らず皆殺しにするぞ!」

キツネの大将はややよっぱらった足取りで立ち上がりました。

「いかん! 今ここで風水を使われては! ポコ・コポ、さあ 早く手を取り合うんだ!」
ポン助が慌てて言いましたので、ポコとコポはお互いの手を握り合いました。
ポン助はねむの木の枝を取り出し、頭の上あたりで グルグルとまわし始めました。

!すると いったいどうしたことでしょう。キツネ達は、いえ、周りの全ての者たちがグーグーと
いびきをかきながら眠ってしまいました。

ねむの木の枝のすばらしい力です。
「さあ 今のうちに 牢屋の鍵を探すんだ。」
「あった!」
「よし 早速親父様たちを助け出しにいこう!」
「まって!このままではいつ気が付くか知れない。どうする?」
「まず このキツネのシッポを切り取ろう。そうすれば 二度と風水の術は使えない。」
「よし!じゃあ、おいらが。」
コポはそう言ったかと思うと、スパっとキツネのシッポを切り取ってしまいました。
でも その大将はまったく気が付かず眠っています。
「これでもう大丈夫!でも このままでは・・・いっそ こいつらをすべて打ち殺して・・」
「コポ !だめだ!そんなことしちゃ! 」
「じゃあ 皆 奴隷にしよう」
「コポ それもだめだ!」
「兄さん!じゃあ いったいどうするんだ?!」

ポコは少し間をおいてから、ポン助に言いました。
「ポン助、この者たちを雲に乗せれるかい?」
「ああ できるとも。」
「それじゃあ この者たち全てを乗せて、ここからはるか南・・・・カッパ島のすぐ南に
誰も住んでない島がある。そこに降ろしてきてくれないか?」
「そんなことはお安いご用だ、でも そんなことでいいのか?親父様たちの敵をとらなくて
いいのか?」


「ああ いいとも こんな事繰り返していたら、いつまでたっても 真の平和は来ない。
もともと われらタヌキ族とキツネ族は同じイヌ族の仲間、いつまでもいがみ合って
いたところで、何の解決にもならないんだ。はじめ、おいらも いっそ皆殺しにでも
してやろうと思った。でも それは間違いだ! コポわかるだろ?
もう そんな時代は終わったんだ。
このまま なにもせず、気が付いたらまったく違うところにいた・・・・
最初は 驚くかも知れないが、キツネたちもきっと判ると思う。」

ポコは二人に語りつづけました。最初気が向かないそぶりをみせていたコポでしたが、
次第にポコの考えがわかってきました。
「兄さん わかったよ。そうだね このままでは、また同じことがおきるかもね。
よ~し、兄さんの言うとおりにしよう。ポン助はどう思う?」
「うん そのとおりと思うよ。よし!じゃあおいらがキツネたちを南の島に連れていって
くるよ。それまで待ってていてくれる?」

「ああ待ってるよ。」

ポン助は眠ったままのキツネ達を雲にのせ、それに先ほど石にしてしまった食べ物を
積み込んで、ポコンポ山を後にしました

つづく

【最終章その1】

雲がながれ、風がふき・・・・鳥は飛び交い、タヌキたちは楽しそうに走り回っています。
ポンポコ島には新しい時代がやってきました。
もう ポコンポ山とコポンポ山との境に深い断崖はなくなりました。
そう ポン助がそれを風水の術で取り払ったのです。

3年・・・、それは人間にとっては ほんのわずかな時ではありますが、
狸たちにとっては、とても長い3年でした。

でもポコやコポ、とりわけポン助の力でこのポンポコ島はもとの島に戻ったのです。

ポコンポ山での出来事以後、いったいどうなったのかお知りになりたいと思います。

実はポコとコポのおふくろ様・お母さんはポコ達を一目見た後、
悲しい事ですが、遠くタヌキ天国へと旅立ってしまったのです。

このことを詳しく書いて、読者の皆様に読んでいただくのが本当かとは思います。
私としては それを書くのが偲びがたく、こういう記述にさせていただきました。

動物でも人間でも同じこと、親子がはなればなれに、ましてやそれが永遠ともなれば、
その悲しさはひとしおです。

実のところ、つい先ごろ、私の家内の父親が永遠の眠りにつきました。
私にも本当の息子のようによく接してくれました。
お母さんはもう7年も前に遠くへと旅立っています。
私の実の父親も4年も前にやはり・・・・

この世に生きている限り、出会いと別れはついてまわります。
ですから、今!この今の出会いとふれあいを大切にして生きたいと思います。

いつか別れるその時ががくるまで・・・・・・・・

最終章その2へ

【最終章その2】

「親父様、どうしても ここに残るのかい?」
「ああ わしはもうそんなに長くない。ここにはわしの妻も眠っている。
生あるかぎり、わしはここに残り、守ってやりたい。」
「でも 親父様を置いてなんかいけないよ。」
「心配するな。わしの片腕が面倒をみてくれるといっている。何も心配するな。」
「でも・・・・」
「ポコよ 親孝行と思ってこのままにしてくれ。いまさら新しいところに行っても、
わしはかえって窮屈になってしまう。この思い出一杯の地で静かに過ごさせておくれ。」

「ポコ、親父様の好きにさせるがええ。」
ポン助が言いました。
「そうだね、お兄ちゃん そうさせてあげなよ。」
「コポ・・・、わかった。けど親父様、困った事があったらすぐ使いをおくれ。」
「ああ 約束するよ。」
「きっとだよ!」

こうしてポコ達は親父様を残しポコンポ山を後にしたのでした。
「さて これからどうする?」
コポが言いました。
「おいらははじめ思ってたとおり、ポンポコ山へいってくるよ。あそこは本当に人間たちと
仲がいいんだ。おいら そういうところで暮らしたいな。」
「そうか ポン助はポンポコ山へ行くのか・・・・・、コポ お前はどうするんだ?
おいらと一緒にこのポンポコ島を守っていってくれるかい?」
「いいや、おいらは おいらの道を行くさ。おいらには 弟や妹がポポコン山で待っている。
でも、兄さん おいら達は兄弟だ。例え離れていても絶対に忘れないよ。何かあったら
きっととんで来るから・・・・」
「そうだね コポ。兄弟だものね。」
「いいな 兄弟か——」
「ポン助、何を言うんだ。おいらたちは ポン助のことも兄弟だと思ってるよ な、 コポ。」
「そうさ 俺たちは 兄弟さ。こんなに気も合うんだものね。」
「うううう ありがとう。」
「ところで にいさん、これからは大変だぞ。なんせこのポンポコ島を取り仕切っていかなくては
ならないから・・・・」
「うん、でもこれは 親父様との約束じゃ。親父様は本当にこの島を愛してた。おいらも
その教えを守って、きっと すばらしい島にしてみせる!」
「ポコ お前だったらできるよ。遠く離れていても応援するからな。」
「うん ありがと。」
「みんな それぞれ離れていても、心は一つだぞ!」
「うん!」「もちろん!」


ポコとコポ、それにポン助はコンポポ山のてっぺんで互いに固い約束をしました。
ここが新しいポンポコ島の拠点になるのです。ポコはあたりをグルリと見渡しました。
ポコポン山、コポンポ山、ポンポコ山、コポポン山、ポポンコ山、ポポコン山、
そしてあの ポコンポ山とポンコポ山・・・・・・・
この 幾月かの間の出来事がうかんでは消えまた浮かびます。

さあ 新しい世界の始まりです!
ポンポコ島に幸いあれ!・・・・・・・・・・・・・・・

おしまい

ポンポコ島ものがたり いかがでしたでしょうか?
この 物語を書くにあたり、最初の構想とは
随分と 変わってしまいました。
でも それはそれ、
これで この物語を終わりとします。
ちょっと変わった発想でと思いつくりました。

 

ここで少し話を付け加えます。
ポンポコ山に行ったポン助ですが、
おりしも 祭りの日でした。
お地蔵様のある一本松の木の下で、皆楽しそうに
踊っておりました。
ポン助は松の木の枝の上で一緒になって踊りました。
(ポンポコ山のたぬきのまつりweb編をご覧下さい)
その後、その後の事は、皆様のご想像にお任せします。

 

①ポンポコ島ものがたりその1

【第一話ポン助のはなし】

ポコポン山に住むポン助は山のてっぺんの草むらにねころんでぼんやりとあたりを見ていました。

南の方角には三つのとがった形をしたコンポポ山があり、その隣にはポンポコ山の姿も見えます。

ポン助はゴロリと横をむきました。と、目の先にポンコポ山とポコンポ山のふたつ山が見えました。

ポン助はあわてて向きを変えました。

なぜって?そこは、昔から恐ろしい魔物がすんでいるとの言い伝えがある山だからです。

このふたつ山はまわりを深い谷にかこまれていておいそれとは行くことができません。

でもポンポコ島のどこかに、ふたつ山へ通じる隠し道があるとのことです。

ポン助はぼんやりと空を見上げていました。するとそこに<雲>が通りかかりました。

ポン助は<雲>にむかっていいました。

「お~~い雲よ、おいらをポンポコ山まで連れてってくれ。」

すると<雲>は答えました。

「いいとも、おやすいご用だ。でもこればっかは、私だけでは決めれない。

<風>さんにたのんでおくれ。」

そこで、ポン助は<風>に頼むことにしました。丁度いい具合に<風>が通りかかりました。

ポン助は<風>にむかっていいました。

「おおい 風よ、おいらをポンポコ山まで連れてってくれ。」

すると<風>は答えました。

「いいとも、おやすいご用だ。でもこればっかは、私だけでは決めれない。

<お日様>にたのんでおくれ。」

そこで、ポン助は<お日様>に頼むことにしました。

しばらくしていると、<お日様>が赤い顔をしてやってきました。

ポン助は<お日様>にむかっていいました。

「おおい お日様、おいらをあのポンポコ山まで連れてってくれ。」

すると<お日様>は答えました。

「私はポン助さんをあそこまで連れてはいけないよ。

だって、私といっしょだとポン助さんは溶けてしまうよ。雲にたのんでごらん。」

「雲にたのんだら、風にたのめって。風にたのんだら、お日様にたのめって。

お日様にたのんだら、雲にたのめって。…・いったいどうしたらいいんだ?」

「ははははは。そういうことか。」<お日様>は大きな声でわらいました。

そしてポン助にいいました。

「ポン助、いいともおやすいご用だ。

でも今日はダメだ。明日の朝<雲>を呼びにやらせるから、それまで待ってておくれ。」
<お日様>はそう言うと姿をかくしてしまいました。

つづく

 

【第二話ポン助のはなし】

次の日の朝、<雲>がポン助を呼びにきました。
「さあ、私の背中に乗りなさい。」
ポン助は<雲>の背中にヒョイと乗りました。
<雲>は<風>いいました。「さあ たのむよ風さん。」
<風>は<お日様>にいいました。「さあ たのむよお日様。」
<お日様>はねむそうにしながらも「ほいほいわかったよ。」とこたえました。
朝のあかるいひざしがポンポコ島の山々にさしはじめました。
今朝はまたかくべつにいい天気です。
ポン助を乗せた<雲>はす~っとポコポン山を離れました。

ポコポン山の上を2度ほどぐるりとまわり、ポン助をのせた<雲>はコポンポ山へと向かいはじめました。
「お~い そっちじゃないよ。おいらはポンポコ山へ行きたいんだ。」ポン助はあわてて言いました。
だってその方向は恐ろしいふたつ山への 方向だったからです。
「心配ないよ。ちゃんとポンポコ山にいってあげるよ。」<雲>はいいました。

コポポン山の上を通り、ポン助をのせた<雲>はポンポコ山へと向かいはじめたのでポン助はホっとしました。

どのくらい進んだ時でしょう。
<雲>の下の方でなにやら騒がしい音がします。
ポン助は気になって <雲>の間からのぞきました。
そこはどうやら人間の住む世界のようです。笛や太鼓の音も聞こえます。
ドンドン、ピーヒャララ 笛や太鼓の音が大きくなりました。ポン助は思わず体をのりだしました。と!

ぴゅ~~。
ポン助のからだは<雲>からまっさかさまに地上へと落ちていきました。

つづく

【第三話ポン助のはなし】

「ありがたや、ありがたや。」

気がつくとポン助はなにやら高い台の上に寝かされていました。

人間がポン助の周りを囲み、けんめいにお祈りをしています。

なにがどうなったのかわかりませんでした。

ポン助は薄目をあけてまわりをみました。

ご馳走がいっぱいならべられています。飲み物もたくさんおいてありました。

ゆっくり横をみると、きれいに着飾った一人の女の子が、

これまたきれいに着飾ったお母さんと、だきあって泣いています。

「ありがたや、ありがたや。」急に耳元で声がしたので、ポン助はビクっとしました。

「ポンポコ氏神様が、身代わりになってくださるんじゃ。」

「ほんに、ありがたいことで・・・」

「あの子を台座に乗せようとした時、突然氏神様がおりていらっしゃって・・・・」

「そうじゃそうじゃ。天から舞い降りてこられたときは、本当にびっくりしたけど、

こうしてあの子の身代わりになっていただけるなんて、なんとありがたいことじゃ。」

「ありがたや、ありがたや。」

やがて人々は笛や太鼓をならしなにやら一心にお祈りを始めました。と、

女の子が母親の手を振り切ってポン助のところにやってきました。

「ポンポコ氏神様、ごめんなさい。私、お母さんと別れるなんて・・・・。」

「ごめんないさい。あのポンコポ山へ行くなんて・・・・」

「ポンポコ氏神様、本当にありがとう。」

そう言って 女の子はまた母親の処に戻って行きました。

事態はようやくのみ込めました。

ポン助はポンポコ氏神様と勘違いされ、どうやら女の子の身代わりとして、

あの恐ろしいポンコポ山へいくことになったみたいです。

ポン助は、あの可愛い女の子の為、この村の人々の為

 身代わりとなって行く事を覚悟しました。

一転空が急に黒い雲で覆われてきました。

人々はあわてて逃げ出しました。そして、周りにはだれもいなくなってしまいました。

ポン助も大変怖かったけれど、傍にあったまんじゅうをきれいな女の子に化かし、

自分はその横のリンゴに化けてじっとしていました。

黒い雲は次第に空の上から降りてきました。

そして、その台座の近くまで来た時、その雲の上から声がしました。

「おい、今日の品物はまた格別だぞ。」

「ほんとだ、へへへ 人間なんてちょろいもんだ。ちょこっと脅かすとこんなことだもんな。」

「さあ 早速運ぶ事にしよう。ご主人がポンコポ山でお待ちだからな・・・」

なんと!それはキツネたちでした。

「なあんだキツネが悪さをしていたのか。」ポン助は正体がわかって安心しました。

「よおし それなら おいらが こいつらを懲らしめてやろう!」

ポン助が化けているとは知らず、キツネたちは 台座を黒い雲に積み込みました。

そして また空高くへと 浮き上がりました。

ポン助を乗せた黒雲はポンコポ山へと向かっていきました。

つづく

【第四話ポコのはなし】

ポポンコ山のポコは狸暦3歳になった日、じいさまから呼ばれました。
ポコは又いつもの長いお説教だなと、少しうんざりしてじいさまの所にいきました。

「お話ってなあに じいさま?」
ポコはできるだけ笑顔で言いました。そうしないと余計に話が長くなるからです。
「ポコや、今日は少し話が長くなるぞ。」
{あれれこれじゃあさっきのご機嫌とりはなにもならないや}
ポコはそう思いましたが、仕方なくじいさまの前に座りました。
と突然、今まで切株に座っていたじいさまが地面に座りこみました。
「ポコや、いや ポコ様、どうか今までのご無礼をおゆるしください。」

ポコはびっくりしました。だって今までじいさまがそんな話し方をしたことがなかった
からです。ポコはじいさまに聞きました。
「じいさま。どうかしたの? おいらびっくりするじゃないか。」
でも じいさまは真剣な顔をしています。ポコはだんだんと不安になってきました。
ポコが黙ってしまったのをみて、じいさまはポツリポツリと話し出しました。

「ポコや いやポコ様。あなたは本当は私の孫ではありません。あなたが生まれたその日、
いや、あなたはこのポポンコ山で生まれたのではないのです。あなたは・・」と 
じいさまは、はるか遠く、深い断崖で離れているポンコポ山を指差し話を続けました。
「あなたは、あのポンコポ山の統領の子供として生まれたのです。それに
あなたにはもう一人コポという弟がいます。弟様は隣のポポコン山に住んでいます。」
ポコはびっくりしてしまいました。おいらが じいさまの孫ではない?それにおいらには
兄弟がいる。では、おいらのおとうやおかあは?いったいどうしたのだろう。じいさま
からおいらが生まれてすぐ亡くなったと聞かされたけど・・・・あの恐ろしい山のことは
いったどうなってるんだろう?

ポコの頭の中で考えがグルグル回り始めました。
と、じいさまが急に泣き出しましたから、ポコはさらにびっくりしてしまいました。
「じいさま。泣かないで。おいらあまりにも急な話だったから驚いちゃったけど、
ちゃんと聞くから話しておくれよ。」

「あの日は・・・」じいさまは又話し始めました。
「あの日はとても天気のいい日じゃった。統領、つまりポコ様の親父さまとわしは
生まれたばかりのポコ様とコポ様の誕生会のことで話しておったんじゃ。・・・・
それまではポンポコ島は今のように離れてはおらなんだ。一つの島だったのじゃ。
突然、南から真っ黒な雲がやってきたかと思うや、あっという間にポンコポ山を
おおいつくしたんじゃ。そして、その雲の中からなんと狐族が襲ってきたんじゃ。
・・ポコ様もご承知のとおり、われら狸族と狐族は昔から争いが絶えたことがない。
じゃが、こんな雲に乗りこんで襲ってくることはなかった。」

じいさまは、その時のことを思い出したのかブルっと身震いをして話を続けました。
「風水の術を会得した狐族がおったんじゃ。風水の術は我が狸族が代々たった一人のみに
伝授していく術だが、どういう訳かそれが狐族に、しかもそれを戦いの道具にするとは!」
じいさまの頭からは怒りで湯気がでてきました。

ポコは詳しいことがもっと聞きたいので、じいさまをなだめました。
怒りがややおさまったのか、じいさまはまた話し始めました。

「そんなわけで、なんの準備もなかったから、我が狸族は戦いに敗れ、
全員あわててコポンポ山の方角に逃げ出したのじゃ。
だが後を追いかけてくる様子だったので風水の術をもったポポンが、
ポコンポ山とコポンポ山の間に大きな割れ目を作ったのじゃ。
それが、今こうして向こう側と深い谷によって分かれているという訳じゃ。」

ポコは、状況が次第にわかってきました。でも、気になることがあります。
「ねえ じいさま。おいらと その弟のコポはどうして離れてしまったの?それに・・」
ポコは一番気になることを思い切って尋ねました。
「それに おいらのおやじさまとおふくろさまは どうなったの?」

「ポコ様の親父様とおふくろ様は皆を逃がす為、最後まで戦いなさったのじゃ。
その後地面が割れてしまったので、どうなったのかわしもわからん。じゃが、
多分とらわれとなって あの ポンコポ山の牢にでも閉じ込められておられると思う。」
「ポコ様とコポ様をわしともう一人が抱きかかえ逃げる用意をしている時、親父様から
言われたのじゃ。3歳になるまではこのことは話さないでおくようにと・・・
そしてそれまで別々に面倒をみるようにとたのまれたのじゃ。」

「ポコ様、今まで本当に厳しくいってまいりました。でもこれはひとえにポコ様の
ことを思ってのこと、決して悪気があったわけではございません。どうかお許しください。」
ポコはここまで聞いた時、胸の奥深くからなにやら得体の知れない気持ちが湧いてきました。
「じいさま ありがとう。おいらを守ってくれて、それにおいらをここまで育ててくれて。」
「おいら じいさまの話を聞いて決心した。おいら あのポンコポ山へ行く!。」
「そして 親父さまやおふくろ様を助けに行く!」

このポコの言葉を聞いてじいさまは、しわくちゃな顔をさらにくしゃくしゃにし、
涙をいっぱい浮かべて、「おお それでこそ ポンコポ山の統領の息子じゃ!」
「おやじさまも、きっとよろこんでおいでじゃ。」「うれしや。うれしや。」と言って
また泣き出しました。

{やれやれ 今日のじいさまはよく泣くことだな。でも じっさいどうしたら向こう側に
行けるのだろう? それに 弟のコポに会いたいな。いっしょに行こうと言おう。
それに おやじさまとおふくろさまは本当に生きているのだろうか?どんな方だろう?}
次々と考えをめぐらせている時、一人の若者がじいさまの所に来ました。
「じいさま 用意ができました。」

おいおい泣いていたじいさまも、泣くのをやめき然とした態度となり、「わかった!」
と答え、若者を退けました。
「ポコさま、わしの後をついてきてくだされ。 よっこらしょっと。」
こう言ってじいさまはたちあがり、トコトコと歩き始めました。
ポコも黙ってその後について行きました。

つづく

【第五話ポコのはなし】

じいさまは、スタコラサッサと早足で歩き、ポポンコ山の頂上につきました。
そこには、この山に住むタヌキ全員が黙ったままで座っていました。
ポコがじいさまの後ろから歩いて行くと、みな頭を低くして挨拶をしました。
松の木の下に丁度手ごろの石があり、じいさまはそこにポコを座らせ、
おもむろに話し始めたのです。

「みなの者よう集まった。すでに知っておろうが、ポコ様が今宵3歳になられる。
これでポコ様も一人前のタヌキとして世を渡って行かねばならない。わしは
先ほど、ポコ様に今までのことをお話申し上げた。そしたら、あのポンコポ山へ
統領を助けにいかれるとのことじゃ。」

ここまで話した時、周りに集まっていたタヌキたちは一同に歓声をあげ、思い切り
それぞれのおなかをたたいたのです。
ポポポン、ポンポン。ポポンポン、いろいろの音が当りの山々にこだまして、それは
それはおおきな音になりました。

「ポコ様今宵はポコ様のお誕生日。みなして盛大にお祝いしましょうぞ。それ!
用意じゃ用意じゃ。」
それまでじっと座っていたタヌキ達は周りから、食べ物や飲み物を出してきました。
そうして宴会の準備をはじめました。

「ポコ様、皆の者に一言お話くだされ。」
じいさまはポコに言いました。ポコは立ちあがり皆を見回してから話し始めました。
「みんな、おいらはじいさまから、色んなことを今日聞いた。あまりのことで気持ちが
ふわふわしてるけど、・・・おやじさまとおふくろさまを ぜったいに助け出してくる。!」
「それに、おいらのためにお誕生会をしてくれてありがとう。」
「きっと ここに戻ってくるからね。」

「じいさま ありがとう。ここまでおいらを育ててくれて。
おいらが帰るまで絶対に待ってておくれよ。」
ここまで話した時、じいさまは大きな声で泣き出しました。

「じいさま。 う~ん しょうがない みんな はじめよう!」
タヌキたちは食べ物をまわし、飲み物をまわし、宴会をはじめました。
そのうち酔いが回ってきたのか、腹鼓や踊りをはじめました。

ポコは、はじめ皆とわいわい騒いでいましたが、つと一人になってあたりを見渡しました。
ポポンコ山は小さな山です。その横にはポポコン山があり、その隣にはすこしてっぺんの
とがったコポポン山があります。北の方をみるとそこには誰もが一度はいってみたいと
思っているポンポコ山、そしてその隣には三角お山のコンポポ山がみえます。
はるか遠くにはポコポン山そしてポンポコ山の陰になってポポンコ山からはみえない
コポンポ山、それに!断崖で離れているポンコポ山とポコンポ山の二ツ山・・・
ポコは思いを新たにしました。

飲んで食べて騒いで・・みんなはいつしか眠ってしまったようです。ポコは意を決し
誰も起こさないようにして、旅立つ事にしました。
{ありがとう じいさま、みんな}ポコは心の中で言い、ポポンコ山を後にしました。

つづく

【第六話コポのはなし】

もうすぐ寒い冬が来るというある朝のことです。
ポポコン山に住むコポは、いつものように 隣のコポポン山へ薬草を取りに出かけました。
ときおり、冷たい風がピューッとポコの体にあたってきますが、ただ黙って山に向かいます。

コポには弟や妹がいます。でもまだ狸暦1歳にもなっていません。
お父さんは、お母さんに食べさせる薬草を取りに出かけたままいまだに帰って来ません。

そう お母さんは今重い病気にかかっていて内で寝ているのです。
コポは来年、いよいよ3歳になり一人前のタヌキとなります。
実のところ、お母さんは本当の親ではないのです。ポコが生まれたばかりの時、
このポンポコ島に異変がおきて、遠くポコンポ山から一緒に逃げてきたと聞いていました。
その恩を忘れず、ポコはお父さんのかわりに薬草を取りに出かけているのでした。

いつものようにコポポン山のてっぺん近くで薬草を採っていると、そこに一人いいえイッピキの
年老いたたぬきが現れて言いました。「お前はポコか?」
「いいや おらはポコじゃねえ、おらはコポだ。」
すると そのおじいさんは「そうか ポコじゃないのか 違っておった・・そうか・・」なにやらぶつぶついいながら
行ってしまいました。
コポは{おかしなじいさんだ}と思いながら薬草を採って帰りかけました。と その時です!
どこからとなくたくさんの石つぶてがコポめがけて飛んで来ました。
コポは飛んでくる石をヒョイヒョイとかわし、その先を見ました。すると!なんと先ほどのおじいさんが石をなげて
いるではありませんか。
「おじいさん やめてくれ!何するんだ!おらはこの薬草をお母さんのところに届けなくてはならないんだ!」
「たのむでやめてくれ!」
コポは必死でおじいさんに言いました。するとそのおじいさんは、
石を投げるのをやめ、コポのところにやってきました。

「コポすまん、ちょこっと試させて貰った。やはりお前は誰かに戦のしかたを習ったな。」
「お父さんから教わったんだ。」
「そうか 父親か。コポよ、お前の生まれた時のことを誰かにきいたことがあるか?」
「うん 少しだけ・・・・・」
「お前には 兄さんがおるのをしっとるか?」
「いいや 知らない。おいらに 兄さんがおるのけ?」
「そうじゃ。お前が生まれた時、狐族との戦いで生き別れになった兄がおる。」
「まもなく程ほどにお前の所に現れるはずじゃ。」
「じいさまは どうしてそんな事しっとるのけ?」
「そのことは また後で話す。兄弟がそろった時、二人してもう一度わしのところに来るのじゃ。」
「それより 急いで帰れ! お前を育ててくれた母親のもとへ!さあ 早く!」

おじいさんのその言葉を聞き、コポは急に不安になり、でおじいさんにあいさつもそこそこであわてて山を降り、
草原のなかを一目散にポポコン山のお母さんのもとへと走り帰りました。

つづく

【第七話コポのはなし】

ぴゅ~・
冷たい風が吹き抜けます。

ぴゅ~~~・
コポの体にあたります。

コポよいそげ! いそげよ 母のもと

いつしか雪も降り始め、コポの顔にあたります。

雪よおいらの邪魔するな。早くお母さんのもとに行きたいんだ!

風よ!おいらを運んでおくれ。病気で寝ている母のところへ!

待ってておくれお母さん。今薬を持っていくから。

コポは走りました。コポポン山のてっぺんから一目散にポポコン山の母のもとへと——

どこか遠くで ”ぽ~~ん” はら鼓の音

「お母さ~~~ん」
コポは流れてくる涙をそのままに、走った走った・・・・・・・・・・・

入り口まで来た時、中にいた妹が飛び出してきた!
「わ~~ん。お兄ちゃん お母さんが、お母さんが・・・」
コポはあわてて母の所へ!

「お母さん。ほら薬だよ。今食べさせてあげるから、さあ お母さん食べて、
お母さんどうして食べないんだ。おいらせっかく採ってきたのに・・・・・・
さあ 食べてよ!お母さん・・・」
コポの声もむなしく響くだけでした。
お母さんは はるか遠く”タヌキ天国”へと旅立って行ったのでした。
「お母さ~~~~ん!」
コポは思い切り大きな声で叫びました。
「お兄ちゃん。お母さん最後までお兄ちゃんのこと言ってたよ。{もういいよ}って。」
「そして、最後にね、あるたけの力で腹鼓をならしたよ。お兄ちゃんに届けって。」

コポは聞きました。コポポン山から帰る途中、それはそれは見事なはら鼓の音を・・・・・

「お兄ちゃん。」弟や妹が寄って来ました。コポは悲しみをこらえ、兄弟を集めて言いました。
「さあ お母さんを送っていこう。」
コポたちは 枯れ木で作った格子の上に、お母さんタヌキを乗せ、ポポコン山のタヌキのお墓へと
運んでいったのでした。
「さあ お別れだ。お前たち 一番いい音を出せよ。」
コポたちは一斉にはら鼓を打ち鳴らしました。
ポン、ぽ~ん、ぽこぽ~ん!
コポたちの打ったはら鼓が、冬の訪れたポポコン山一面にこだましました。

冬も終わり、春の足音が聞こえてきました。
長い眠りからさめたコポたちは、すみかから一斉に飛び出しました。
新しい時代の幕開けです。コポは3歳となり、弟や妹たちは1歳になりました。

コポは弟や妹達にタヌキの世界のしきたりや、付き合い方などを教え込みました。
そうこうして一人前のタヌキとなっていくのです。

コポはあのお母さんが死んだ日、コポポン山で出会ったおじいさんの言ったことが、
少し気にかかっていました。
{あのおじいさんは おいらにどうしようと言うんだろう?}{「一緒に来い。」といってたけど、
どういうことなんだろうな?}

そんなある日の事でした。一人いえイッピキの若々しいタヌキがコポを尋ねてきました。
そしてコポにこう言いました。
「おやじさまとおふくろさまを助けに行こう!」と・・・・・・・

つづく

いががでしたでしょうか?
その1、その2、その3と、お話がすすんできました。
これからいよいよ ポコンポ山をめざし 進んでいくことになるのですが、
その前にまだすることがあるのです。
この続きは その4”コポポン山の仙人タヌキ”でお楽しみください。

【第八話仙人タヌキのはなし】

タヌキ暦13歳になるポポンは、相当年老いたタヌキです。
時折 ポンポコ山のはるか向こうに見えるポコンポ山とポンコポ山をながめては、ため息をついておりました。

実のところ、タヌキの世界では4~5年でその一生を終えるのがほとんどで、8~10年も生きているのは大変
めずらしいことです。そんなタヌキが13年も生きているというのは、まさにタヌキ世界では国宝級?な存在です。

さてさて話が少し横道にそれてしまいました。

賢明な皆さんは、”ポポン”という名前をお聞きになって{おや?}と思われたことと思います。
そうなんです。このポポンは、何をかくそう実は風水師なのです。ポコンポ山での狐族との戦いの後、
あちら側とこちら側の間に深い谷間を創ったのは彼なんです。でも、あれから早や3年・・・・・
ポポンはすっかり年老いてしまいました。もう後いくばくも力がありません。風水師としての力はもうありません。
その証拠にポポンのシッポにはもう赤いところは見当たらず、ほとんど白くなっておりました。

風水の力はタヌキのシッポにあります。タヌキ族に代々伝わるある儀式によりそれは受け継がれていくのです。
その力は、今から1年ほど前にひ孫のポン助に引き継がれました。

おや?ポン助?・・・そうです。このポンポコ島物語の その1 ポコポン山のポン助のお話の中に出てきましたね。
でも、ポン助は自分がまだ風水師なんてことはまったく知らないのです。ですからその使い方も力もわかりません。

そのポン助は狐族の黒雲に乗り、ポコンポ山へと向かったはずです。

ポポンは先だってこのコポポン山で出会ったコポという若者が、早く会いに来るのをまっておりました。
自分が生きている間にぜひとも伝えておく事があるからです。
この前、そのコポが薬草を採りにきた時、少し試しました。まさに彼はタヌキ族の戦士の一人だったのです。

つづく

【第九話仙人タヌキのはなし】

タヌキ暦13歳になるポポンは、相当年老いたタヌキです。
時折 ポンポコ山のはるか向こうに見えるポコンポ山とポンコポ山をながめては、ため息をついておりました。

実のところ、タヌキの世界では4~5年でその一生を終えるのがほとんどで、8~10年も生きているのは大変
めずらしいことです。そんなタヌキが13年も生きているというのは、まさにタヌキ世界では国宝級?な存在です。

さてさて話が少し横道にそれてしまいました。

賢明な皆さんは、”ポポン”という名前をお聞きになって{おや?}と思われたことと思います。
そうなんです。このポポンは、何をかくそう実は風水師なのです。ポコンポ山での狐族との戦いの後、
あちら側とこちら側の間に深い谷間を創ったのは彼なんです。でも、あれから早や3年・・・・・
ポポンはすっかり年老いてしまいました。もう後いくばくも力がありません。風水師としての力はもうありません。
その証拠にポポンのシッポにはもう赤いところは見当たらず、ほとんど白くなっておりました。

風水の力はタヌキのシッポにあります。タヌキ族に代々伝わるある儀式によりそれは受け継がれていくのです。
その力は、今から1年ほど前にひ孫のポン助に引き継がれました。

おや?ポン助?・・・そうです。このポンポコ島物語の その1 ポコポン山のポン助のお話の中に出てきましたね。
でも、ポン助は自分がまだ風水師なんてことはまったく知らないのです。ですからその使い方も力もわかりません。

そのポン助は狐族の黒雲に乗り、ポコンポ山へと向かったはずです。

ポポンは先だってこのコポポン山で出会ったコポという若者が、早く会いに来るのをまっておりました。
自分が生きている間にぜひとも伝えておく事があるからです。
この前、そのコポが薬草を採りにきた時、少し試しました。まさに彼はタヌキ族の戦士の一人だったのです。

つづく

【第十話仙人タヌキのはなし】

あの日、確かに戦士を見つけたのです。
これで 戦える!あの狐族を追い出す事ができる。早くそうなって欲しい!と思っていたポポンは年老いた体に
鞭打って準備をはじめました。

コポポン山のあちらこちらから、薬草を採ってきてそれを調合しました。調合といっても人間とはちがいます。
ただちぎってまぜるだけですが・・・・・山の隠し穴から武器も取り出してきました。そして最後に山のてっぺんから
ねむの木の枝を折ってきました。
これですっかり準備ができました。後はコポ達を待つだけです。

長い冬が終わり、春が来ました。14歳となったポポンは、もうあたりの景色もみることすら出来なくなりましたが、
ただ一途にコポたちが尋ねてくるのをまっていました。

空高くうぐいすが大きな声で鳴きました。
「こんにちは、おいら コポです。」
やってきました ポコとコポの二人がいえ二匹が!ついうとうととしていたポポンですが、その声を聞いたとたん
寝ていた体をキっと起こし「おお、早くこっちへ!」と大きな声で答えました
ポコとコポはその声をきき、ポポンのところにやってきたのです。
ポポンには二匹のりりしい姿がはっきりと見てとることができました。
「おお 待ちかねたぞ!」「お前たちは あのポコンポ山へいくつもりで来たのか?」
二匹はただ黙ってうなずきました。
「そこに道具や武器はすべてそろえてある。それを持っていけ!」
「お前たちは、お前たちの生まれた時のことはすでに聞いたと思う。お前たちの親父様とおふくろ様は
とらわれの身となって牢屋に入れられていると思う。一刻も早く助け出してくれ。それに 多分あちこちからつれて
こられたものたちが奴隷としてつかわれておる事と思う。もちろんその中には人間どもいる事と思うが、われわれ
タヌキ族とは昔より仲が良いからついでに助けてやってくれ。」

「われわれタヌキ族にはその昔より風水の術を持つものがおる。わしもその一人だったが、
今はポン助というものがその力を受け継いでおる。だが、そのものは自分にそんな力があることを
多分知らないと思う。お前たちとちがってシッポが真っ赤だからすぐわかるじゃろう。
ぜひ探し出し仲間に加える事じゃ。」

「キツネ族の中に同じように赤いシッポをもったものがおるはずじゃ。そいつを見つけ出しシッポを切り取るがよい。
そうすれば もう風水は使えなくなるはずじゃ。もともとはタヌキ族のみに伝わる術、
他のキツネが会得することはない」

「コポよお前は戦士の力を授かっておる。ポコよお前は勿論統領としての力をもっておる。お前の統率力でぜひとも
にっくきキツネ族を倒してくれ。そして 二度とこのポンポコ島に立ち入らぬように追い出してくれ。」

「ゴホゴホ・・・・ポコンポ山にいくのにはおいそれとはいかぬ。
ここよりはるか北、ポンポコ山とコンポポ山の間を通り抜けコポンポ山に行くがよい。
そこに小さな洞穴があるのでその中に入るがよい。その洞穴のなかは迷路となっておるが、
そこを上手に通り抜けてくれ。もしそこでつまずくと、外に放り出されてしまうから注意しろ。」

「ゴホゴホ・・・・・・・そこを通り抜ければ、目指すポコンポ山じゃ。む!・・・・・」

「じさま!」

「ゴホゴホ・・・・・・大丈夫じゃ。ゴホゴホ・・・最後になったが、このねむの木を渡す。
これは向こうについたら使うのじゃぐるぐるとまわすとたいていのキツネたちは眠るじゃろう。
だがそれ以外のところでは使うな!皆寝てしまうからな。」

ポポンはあるたけの力を出し切りポコとコポに話しました。
二匹の若者はポポンの話を聞き終えコポンポ山へと向かいました。まずは迷宮を通り抜けなくてはなりません。

二匹のたくましい姿を瞼に焼き付け、ポポンは静かに深い眠りにつきました。

つぎへ

いががでしたでしょうか?
ここまで来たらあとは一目散にポコンポ山に向かうだけですが
お話の中にもあったように、コポンポ山は迷宮になっているみたいです。

本来ならばここで第十一話となるのですが、物語は迷宮を通らないと次に進めないような構成になっています。でもここでは、その構成通りに進めないので、「ポンポコ島ものがたりその2」として記述します。では、ポンポコ島ものがたりその2をおたのしみに。

②ポンポコ島伝説第一巻

始めに、このポンポコ島伝説はホームページ「工房音絵夢ing」で書いています。一種のロールプレインのような形式で作り上げました。このwordpressに持ち込むことができませんのでURLを貼り付けました。どうぞ下↓のマークをクリックしてお入りください。