【第一話ポン助のはなし】
ポコポン山に住むポン助は山のてっぺんの草むらにねころんでぼんやりとあたりを見ていました。
南の方角には三つのとがった形をしたコンポポ山があり、その隣にはポンポコ山の姿も見えます。
ポン助はゴロリと横をむきました。と、目の先にポンコポ山とポコンポ山のふたつ山が見えました。
ポン助はあわてて向きを変えました。
なぜって?そこは、昔から恐ろしい魔物がすんでいるとの言い伝えがある山だからです。
このふたつ山はまわりを深い谷にかこまれていておいそれとは行くことができません。
でもポンポコ島のどこかに、ふたつ山へ通じる隠し道があるとのことです。
ポン助はぼんやりと空を見上げていました。するとそこに<雲>が通りかかりました。
ポン助は<雲>にむかっていいました。
「お~~い雲よ、おいらをポンポコ山まで連れてってくれ。」
すると<雲>は答えました。
「いいとも、おやすいご用だ。でもこればっかは、私だけでは決めれない。
<風>さんにたのんでおくれ。」
そこで、ポン助は<風>に頼むことにしました。丁度いい具合に<風>が通りかかりました。
ポン助は<風>にむかっていいました。
「おおい 風よ、おいらをポンポコ山まで連れてってくれ。」
すると<風>は答えました。
「いいとも、おやすいご用だ。でもこればっかは、私だけでは決めれない。
<お日様>にたのんでおくれ。」
そこで、ポン助は<お日様>に頼むことにしました。
しばらくしていると、<お日様>が赤い顔をしてやってきました。
ポン助は<お日様>にむかっていいました。
「おおい お日様、おいらをあのポンポコ山まで連れてってくれ。」
すると<お日様>は答えました。
「私はポン助さんをあそこまで連れてはいけないよ。
だって、私といっしょだとポン助さんは溶けてしまうよ。雲にたのんでごらん。」
「雲にたのんだら、風にたのめって。風にたのんだら、お日様にたのめって。
お日様にたのんだら、雲にたのめって。…・いったいどうしたらいいんだ?」
「ははははは。そういうことか。」<お日様>は大きな声でわらいました。
そしてポン助にいいました。
「ポン助、いいともおやすいご用だ。
でも今日はダメだ。明日の朝<雲>を呼びにやらせるから、それまで待ってておくれ。」
<お日様>はそう言うと姿をかくしてしまいました。
つづく
【第二話ポン助のはなし】
次の日の朝、<雲>がポン助を呼びにきました。
「さあ、私の背中に乗りなさい。」
ポン助は<雲>の背中にヒョイと乗りました。
<雲>は<風>いいました。「さあ たのむよ風さん。」
<風>は<お日様>にいいました。「さあ たのむよお日様。」
<お日様>はねむそうにしながらも「ほいほいわかったよ。」とこたえました。
朝のあかるいひざしがポンポコ島の山々にさしはじめました。
今朝はまたかくべつにいい天気です。
ポン助を乗せた<雲>はす~っとポコポン山を離れました。
ポコポン山の上を2度ほどぐるりとまわり、ポン助をのせた<雲>はコポンポ山へと向かいはじめました。
「お~い そっちじゃないよ。おいらはポンポコ山へ行きたいんだ。」ポン助はあわてて言いました。
だってその方向は恐ろしいふたつ山への 方向だったからです。
「心配ないよ。ちゃんとポンポコ山にいってあげるよ。」<雲>はいいました。
コポポン山の上を通り、ポン助をのせた<雲>はポンポコ山へと向かいはじめたのでポン助はホっとしました。
どのくらい進んだ時でしょう。
<雲>の下の方でなにやら騒がしい音がします。
ポン助は気になって <雲>の間からのぞきました。
そこはどうやら人間の住む世界のようです。笛や太鼓の音も聞こえます。
ドンドン、ピーヒャララ 笛や太鼓の音が大きくなりました。ポン助は思わず体をのりだしました。と!
ぴゅ~~。
ポン助のからだは<雲>からまっさかさまに地上へと落ちていきました。
つづく
【第三話ポン助のはなし】
「ありがたや、ありがたや。」
気がつくとポン助はなにやら高い台の上に寝かされていました。
人間がポン助の周りを囲み、けんめいにお祈りをしています。
なにがどうなったのかわかりませんでした。
ポン助は薄目をあけてまわりをみました。
ご馳走がいっぱいならべられています。飲み物もたくさんおいてありました。
ゆっくり横をみると、きれいに着飾った一人の女の子が、
これまたきれいに着飾ったお母さんと、だきあって泣いています。
「ありがたや、ありがたや。」急に耳元で声がしたので、ポン助はビクっとしました。
「ポンポコ氏神様が、身代わりになってくださるんじゃ。」
「ほんに、ありがたいことで・・・」
「あの子を台座に乗せようとした時、突然氏神様がおりていらっしゃって・・・・」
「そうじゃそうじゃ。天から舞い降りてこられたときは、本当にびっくりしたけど、
こうしてあの子の身代わりになっていただけるなんて、なんとありがたいことじゃ。」
「ありがたや、ありがたや。」
やがて人々は笛や太鼓をならしなにやら一心にお祈りを始めました。と、
女の子が母親の手を振り切ってポン助のところにやってきました。
「ポンポコ氏神様、ごめんなさい。私、お母さんと別れるなんて・・・・。」
「ごめんないさい。あのポンコポ山へ行くなんて・・・・」
「ポンポコ氏神様、本当にありがとう。」
そう言って 女の子はまた母親の処に戻って行きました。
事態はようやくのみ込めました。
ポン助はポンポコ氏神様と勘違いされ、どうやら女の子の身代わりとして、
あの恐ろしいポンコポ山へいくことになったみたいです。
ポン助は、あの可愛い女の子の為、この村の人々の為
身代わりとなって行く事を覚悟しました。
一転空が急に黒い雲で覆われてきました。
人々はあわてて逃げ出しました。そして、周りにはだれもいなくなってしまいました。
ポン助も大変怖かったけれど、傍にあったまんじゅうをきれいな女の子に化かし、
自分はその横のリンゴに化けてじっとしていました。
黒い雲は次第に空の上から降りてきました。
そして、その台座の近くまで来た時、その雲の上から声がしました。
「おい、今日の品物はまた格別だぞ。」
「ほんとだ、へへへ 人間なんてちょろいもんだ。ちょこっと脅かすとこんなことだもんな。」
「さあ 早速運ぶ事にしよう。ご主人がポンコポ山でお待ちだからな・・・」
なんと!それはキツネたちでした。
「なあんだキツネが悪さをしていたのか。」ポン助は正体がわかって安心しました。
「よおし それなら おいらが こいつらを懲らしめてやろう!」
ポン助が化けているとは知らず、キツネたちは 台座を黒い雲に積み込みました。
そして また空高くへと 浮き上がりました。
ポン助を乗せた黒雲はポンコポ山へと向かっていきました。
つづく
【第四話ポコのはなし】
ポポンコ山のポコは狸暦3歳になった日、じいさまから呼ばれました。
ポコは又いつもの長いお説教だなと、少しうんざりしてじいさまの所にいきました。
「お話ってなあに じいさま?」
ポコはできるだけ笑顔で言いました。そうしないと余計に話が長くなるからです。
「ポコや、今日は少し話が長くなるぞ。」
{あれれこれじゃあさっきのご機嫌とりはなにもならないや}
ポコはそう思いましたが、仕方なくじいさまの前に座りました。
と突然、今まで切株に座っていたじいさまが地面に座りこみました。
「ポコや、いや ポコ様、どうか今までのご無礼をおゆるしください。」
ポコはびっくりしました。だって今までじいさまがそんな話し方をしたことがなかった
からです。ポコはじいさまに聞きました。
「じいさま。どうかしたの? おいらびっくりするじゃないか。」
でも じいさまは真剣な顔をしています。ポコはだんだんと不安になってきました。
ポコが黙ってしまったのをみて、じいさまはポツリポツリと話し出しました。
「ポコや いやポコ様。あなたは本当は私の孫ではありません。あなたが生まれたその日、
いや、あなたはこのポポンコ山で生まれたのではないのです。あなたは・・」と
じいさまは、はるか遠く、深い断崖で離れているポンコポ山を指差し話を続けました。
「あなたは、あのポンコポ山の統領の子供として生まれたのです。それに
あなたにはもう一人コポという弟がいます。弟様は隣のポポコン山に住んでいます。」
ポコはびっくりしてしまいました。おいらが じいさまの孫ではない?それにおいらには
兄弟がいる。では、おいらのおとうやおかあは?いったいどうしたのだろう。じいさま
からおいらが生まれてすぐ亡くなったと聞かされたけど・・・・あの恐ろしい山のことは
いったどうなってるんだろう?
ポコの頭の中で考えがグルグル回り始めました。
と、じいさまが急に泣き出しましたから、ポコはさらにびっくりしてしまいました。
「じいさま。泣かないで。おいらあまりにも急な話だったから驚いちゃったけど、
ちゃんと聞くから話しておくれよ。」
「あの日は・・・」じいさまは又話し始めました。
「あの日はとても天気のいい日じゃった。統領、つまりポコ様の親父さまとわしは
生まれたばかりのポコ様とコポ様の誕生会のことで話しておったんじゃ。・・・・
それまではポンポコ島は今のように離れてはおらなんだ。一つの島だったのじゃ。
突然、南から真っ黒な雲がやってきたかと思うや、あっという間にポンコポ山を
おおいつくしたんじゃ。そして、その雲の中からなんと狐族が襲ってきたんじゃ。
・・ポコ様もご承知のとおり、われら狸族と狐族は昔から争いが絶えたことがない。
じゃが、こんな雲に乗りこんで襲ってくることはなかった。」
じいさまは、その時のことを思い出したのかブルっと身震いをして話を続けました。
「風水の術を会得した狐族がおったんじゃ。風水の術は我が狸族が代々たった一人のみに
伝授していく術だが、どういう訳かそれが狐族に、しかもそれを戦いの道具にするとは!」
じいさまの頭からは怒りで湯気がでてきました。
ポコは詳しいことがもっと聞きたいので、じいさまをなだめました。
怒りがややおさまったのか、じいさまはまた話し始めました。
「そんなわけで、なんの準備もなかったから、我が狸族は戦いに敗れ、
全員あわててコポンポ山の方角に逃げ出したのじゃ。
だが後を追いかけてくる様子だったので風水の術をもったポポンが、
ポコンポ山とコポンポ山の間に大きな割れ目を作ったのじゃ。
それが、今こうして向こう側と深い谷によって分かれているという訳じゃ。」
ポコは、状況が次第にわかってきました。でも、気になることがあります。
「ねえ じいさま。おいらと その弟のコポはどうして離れてしまったの?それに・・」
ポコは一番気になることを思い切って尋ねました。
「それに おいらのおやじさまとおふくろさまは どうなったの?」
「ポコ様の親父様とおふくろ様は皆を逃がす為、最後まで戦いなさったのじゃ。
その後地面が割れてしまったので、どうなったのかわしもわからん。じゃが、
多分とらわれとなって あの ポンコポ山の牢にでも閉じ込められておられると思う。」
「ポコ様とコポ様をわしともう一人が抱きかかえ逃げる用意をしている時、親父様から
言われたのじゃ。3歳になるまではこのことは話さないでおくようにと・・・
そしてそれまで別々に面倒をみるようにとたのまれたのじゃ。」
「ポコ様、今まで本当に厳しくいってまいりました。でもこれはひとえにポコ様の
ことを思ってのこと、決して悪気があったわけではございません。どうかお許しください。」
ポコはここまで聞いた時、胸の奥深くからなにやら得体の知れない気持ちが湧いてきました。
「じいさま ありがとう。おいらを守ってくれて、それにおいらをここまで育ててくれて。」
「おいら じいさまの話を聞いて決心した。おいら あのポンコポ山へ行く!。」
「そして 親父さまやおふくろ様を助けに行く!」
このポコの言葉を聞いてじいさまは、しわくちゃな顔をさらにくしゃくしゃにし、
涙をいっぱい浮かべて、「おお それでこそ ポンコポ山の統領の息子じゃ!」
「おやじさまも、きっとよろこんでおいでじゃ。」「うれしや。うれしや。」と言って
また泣き出しました。
{やれやれ 今日のじいさまはよく泣くことだな。でも じっさいどうしたら向こう側に
行けるのだろう? それに 弟のコポに会いたいな。いっしょに行こうと言おう。
それに おやじさまとおふくろさまは本当に生きているのだろうか?どんな方だろう?}
次々と考えをめぐらせている時、一人の若者がじいさまの所に来ました。
「じいさま 用意ができました。」
おいおい泣いていたじいさまも、泣くのをやめき然とした態度となり、「わかった!」
と答え、若者を退けました。
「ポコさま、わしの後をついてきてくだされ。 よっこらしょっと。」
こう言ってじいさまはたちあがり、トコトコと歩き始めました。
ポコも黙ってその後について行きました。
つづく
【第五話ポコのはなし】
じいさまは、スタコラサッサと早足で歩き、ポポンコ山の頂上につきました。
そこには、この山に住むタヌキ全員が黙ったままで座っていました。
ポコがじいさまの後ろから歩いて行くと、みな頭を低くして挨拶をしました。
松の木の下に丁度手ごろの石があり、じいさまはそこにポコを座らせ、
おもむろに話し始めたのです。
「みなの者よう集まった。すでに知っておろうが、ポコ様が今宵3歳になられる。
これでポコ様も一人前のタヌキとして世を渡って行かねばならない。わしは
先ほど、ポコ様に今までのことをお話申し上げた。そしたら、あのポンコポ山へ
統領を助けにいかれるとのことじゃ。」
ここまで話した時、周りに集まっていたタヌキたちは一同に歓声をあげ、思い切り
それぞれのおなかをたたいたのです。
ポポポン、ポンポン。ポポンポン、いろいろの音が当りの山々にこだまして、それは
それはおおきな音になりました。
「ポコ様今宵はポコ様のお誕生日。みなして盛大にお祝いしましょうぞ。それ!
用意じゃ用意じゃ。」
それまでじっと座っていたタヌキ達は周りから、食べ物や飲み物を出してきました。
そうして宴会の準備をはじめました。
「ポコ様、皆の者に一言お話くだされ。」
じいさまはポコに言いました。ポコは立ちあがり皆を見回してから話し始めました。
「みんな、おいらはじいさまから、色んなことを今日聞いた。あまりのことで気持ちが
ふわふわしてるけど、・・・おやじさまとおふくろさまを ぜったいに助け出してくる。!」
「それに、おいらのためにお誕生会をしてくれてありがとう。」
「きっと ここに戻ってくるからね。」
「じいさま ありがとう。ここまでおいらを育ててくれて。
おいらが帰るまで絶対に待ってておくれよ。」
ここまで話した時、じいさまは大きな声で泣き出しました。
「じいさま。 う~ん しょうがない みんな はじめよう!」
タヌキたちは食べ物をまわし、飲み物をまわし、宴会をはじめました。
そのうち酔いが回ってきたのか、腹鼓や踊りをはじめました。
ポコは、はじめ皆とわいわい騒いでいましたが、つと一人になってあたりを見渡しました。
ポポンコ山は小さな山です。その横にはポポコン山があり、その隣にはすこしてっぺんの
とがったコポポン山があります。北の方をみるとそこには誰もが一度はいってみたいと
思っているポンポコ山、そしてその隣には三角お山のコンポポ山がみえます。
はるか遠くにはポコポン山そしてポンポコ山の陰になってポポンコ山からはみえない
コポンポ山、それに!断崖で離れているポンコポ山とポコンポ山の二ツ山・・・
ポコは思いを新たにしました。
飲んで食べて騒いで・・みんなはいつしか眠ってしまったようです。ポコは意を決し
誰も起こさないようにして、旅立つ事にしました。
{ありがとう じいさま、みんな}ポコは心の中で言い、ポポンコ山を後にしました。
つづく
【第六話コポのはなし】
もうすぐ寒い冬が来るというある朝のことです。
ポポコン山に住むコポは、いつものように 隣のコポポン山へ薬草を取りに出かけました。
ときおり、冷たい風がピューッとポコの体にあたってきますが、ただ黙って山に向かいます。
コポには弟や妹がいます。でもまだ狸暦1歳にもなっていません。
お父さんは、お母さんに食べさせる薬草を取りに出かけたままいまだに帰って来ません。
そう お母さんは今重い病気にかかっていて内で寝ているのです。
コポは来年、いよいよ3歳になり一人前のタヌキとなります。
実のところ、お母さんは本当の親ではないのです。ポコが生まれたばかりの時、
このポンポコ島に異変がおきて、遠くポコンポ山から一緒に逃げてきたと聞いていました。
その恩を忘れず、ポコはお父さんのかわりに薬草を取りに出かけているのでした。
いつものようにコポポン山のてっぺん近くで薬草を採っていると、そこに一人いいえイッピキの
年老いたたぬきが現れて言いました。「お前はポコか?」
「いいや おらはポコじゃねえ、おらはコポだ。」
すると そのおじいさんは「そうか ポコじゃないのか 違っておった・・そうか・・」なにやらぶつぶついいながら
行ってしまいました。
コポは{おかしなじいさんだ}と思いながら薬草を採って帰りかけました。と その時です!
どこからとなくたくさんの石つぶてがコポめがけて飛んで来ました。
コポは飛んでくる石をヒョイヒョイとかわし、その先を見ました。すると!なんと先ほどのおじいさんが石をなげて
いるではありませんか。
「おじいさん やめてくれ!何するんだ!おらはこの薬草をお母さんのところに届けなくてはならないんだ!」
「たのむでやめてくれ!」
コポは必死でおじいさんに言いました。するとそのおじいさんは、
石を投げるのをやめ、コポのところにやってきました。
「コポすまん、ちょこっと試させて貰った。やはりお前は誰かに戦のしかたを習ったな。」
「お父さんから教わったんだ。」
「そうか 父親か。コポよ、お前の生まれた時のことを誰かにきいたことがあるか?」
「うん 少しだけ・・・・・」
「お前には 兄さんがおるのをしっとるか?」
「いいや 知らない。おいらに 兄さんがおるのけ?」
「そうじゃ。お前が生まれた時、狐族との戦いで生き別れになった兄がおる。」
「まもなく程ほどにお前の所に現れるはずじゃ。」
「じいさまは どうしてそんな事しっとるのけ?」
「そのことは また後で話す。兄弟がそろった時、二人してもう一度わしのところに来るのじゃ。」
「それより 急いで帰れ! お前を育ててくれた母親のもとへ!さあ 早く!」
おじいさんのその言葉を聞き、コポは急に不安になり、でおじいさんにあいさつもそこそこであわてて山を降り、
草原のなかを一目散にポポコン山のお母さんのもとへと走り帰りました。
つづく
【第七話コポのはなし】
ぴゅ~・
冷たい風が吹き抜けます。
ぴゅ~~~・
コポの体にあたります。
コポよいそげ! いそげよ 母のもと
いつしか雪も降り始め、コポの顔にあたります。
雪よおいらの邪魔するな。早くお母さんのもとに行きたいんだ!
風よ!おいらを運んでおくれ。病気で寝ている母のところへ!
待ってておくれお母さん。今薬を持っていくから。
コポは走りました。コポポン山のてっぺんから一目散にポポコン山の母のもとへと——
どこか遠くで ”ぽ~~ん” はら鼓の音
「お母さ~~~ん」
コポは流れてくる涙をそのままに、走った走った・・・・・・・・・・・
入り口まで来た時、中にいた妹が飛び出してきた!
「わ~~ん。お兄ちゃん お母さんが、お母さんが・・・」
コポはあわてて母の所へ!
「お母さん。ほら薬だよ。今食べさせてあげるから、さあ お母さん食べて、
お母さんどうして食べないんだ。おいらせっかく採ってきたのに・・・・・・
さあ 食べてよ!お母さん・・・」
コポの声もむなしく響くだけでした。
お母さんは はるか遠く”タヌキ天国”へと旅立って行ったのでした。
「お母さ~~~~ん!」
コポは思い切り大きな声で叫びました。
「お兄ちゃん。お母さん最後までお兄ちゃんのこと言ってたよ。{もういいよ}って。」
「そして、最後にね、あるたけの力で腹鼓をならしたよ。お兄ちゃんに届けって。」
コポは聞きました。コポポン山から帰る途中、それはそれは見事なはら鼓の音を・・・・・
「お兄ちゃん。」弟や妹が寄って来ました。コポは悲しみをこらえ、兄弟を集めて言いました。
「さあ お母さんを送っていこう。」
コポたちは 枯れ木で作った格子の上に、お母さんタヌキを乗せ、ポポコン山のタヌキのお墓へと
運んでいったのでした。
「さあ お別れだ。お前たち 一番いい音を出せよ。」
コポたちは一斉にはら鼓を打ち鳴らしました。
ポン、ぽ~ん、ぽこぽ~ん!
コポたちの打ったはら鼓が、冬の訪れたポポコン山一面にこだましました。
冬も終わり、春の足音が聞こえてきました。
長い眠りからさめたコポたちは、すみかから一斉に飛び出しました。
新しい時代の幕開けです。コポは3歳となり、弟や妹たちは1歳になりました。
コポは弟や妹達にタヌキの世界のしきたりや、付き合い方などを教え込みました。
そうこうして一人前のタヌキとなっていくのです。
コポはあのお母さんが死んだ日、コポポン山で出会ったおじいさんの言ったことが、
少し気にかかっていました。
{あのおじいさんは おいらにどうしようと言うんだろう?}{「一緒に来い。」といってたけど、
どういうことなんだろうな?}
そんなある日の事でした。一人いえイッピキの若々しいタヌキがコポを尋ねてきました。
そしてコポにこう言いました。
「おやじさまとおふくろさまを助けに行こう!」と・・・・・・・
つづく
いががでしたでしょうか?
その1、その2、その3と、お話がすすんできました。
これからいよいよ ポコンポ山をめざし 進んでいくことになるのですが、
その前にまだすることがあるのです。
この続きは その4”コポポン山の仙人タヌキ”でお楽しみください。
【第八話仙人タヌキのはなし】
タヌキ暦13歳になるポポンは、相当年老いたタヌキです。
時折 ポンポコ山のはるか向こうに見えるポコンポ山とポンコポ山をながめては、ため息をついておりました。
実のところ、タヌキの世界では4~5年でその一生を終えるのがほとんどで、8~10年も生きているのは大変
めずらしいことです。そんなタヌキが13年も生きているというのは、まさにタヌキ世界では国宝級?な存在です。
さてさて話が少し横道にそれてしまいました。
賢明な皆さんは、”ポポン”という名前をお聞きになって{おや?}と思われたことと思います。
そうなんです。このポポンは、何をかくそう実は風水師なのです。ポコンポ山での狐族との戦いの後、
あちら側とこちら側の間に深い谷間を創ったのは彼なんです。でも、あれから早や3年・・・・・
ポポンはすっかり年老いてしまいました。もう後いくばくも力がありません。風水師としての力はもうありません。
その証拠にポポンのシッポにはもう赤いところは見当たらず、ほとんど白くなっておりました。
風水の力はタヌキのシッポにあります。タヌキ族に代々伝わるある儀式によりそれは受け継がれていくのです。
その力は、今から1年ほど前にひ孫のポン助に引き継がれました。
おや?ポン助?・・・そうです。このポンポコ島物語の その1 ポコポン山のポン助のお話の中に出てきましたね。
でも、ポン助は自分がまだ風水師なんてことはまったく知らないのです。ですからその使い方も力もわかりません。
そのポン助は狐族の黒雲に乗り、ポコンポ山へと向かったはずです。
ポポンは先だってこのコポポン山で出会ったコポという若者が、早く会いに来るのをまっておりました。
自分が生きている間にぜひとも伝えておく事があるからです。
この前、そのコポが薬草を採りにきた時、少し試しました。まさに彼はタヌキ族の戦士の一人だったのです。
つづく
【第九話仙人タヌキのはなし】
タヌキ暦13歳になるポポンは、相当年老いたタヌキです。
時折 ポンポコ山のはるか向こうに見えるポコンポ山とポンコポ山をながめては、ため息をついておりました。
実のところ、タヌキの世界では4~5年でその一生を終えるのがほとんどで、8~10年も生きているのは大変
めずらしいことです。そんなタヌキが13年も生きているというのは、まさにタヌキ世界では国宝級?な存在です。
さてさて話が少し横道にそれてしまいました。
賢明な皆さんは、”ポポン”という名前をお聞きになって{おや?}と思われたことと思います。
そうなんです。このポポンは、何をかくそう実は風水師なのです。ポコンポ山での狐族との戦いの後、
あちら側とこちら側の間に深い谷間を創ったのは彼なんです。でも、あれから早や3年・・・・・
ポポンはすっかり年老いてしまいました。もう後いくばくも力がありません。風水師としての力はもうありません。
その証拠にポポンのシッポにはもう赤いところは見当たらず、ほとんど白くなっておりました。
風水の力はタヌキのシッポにあります。タヌキ族に代々伝わるある儀式によりそれは受け継がれていくのです。
その力は、今から1年ほど前にひ孫のポン助に引き継がれました。
おや?ポン助?・・・そうです。このポンポコ島物語の その1 ポコポン山のポン助のお話の中に出てきましたね。
でも、ポン助は自分がまだ風水師なんてことはまったく知らないのです。ですからその使い方も力もわかりません。
そのポン助は狐族の黒雲に乗り、ポコンポ山へと向かったはずです。
ポポンは先だってこのコポポン山で出会ったコポという若者が、早く会いに来るのをまっておりました。
自分が生きている間にぜひとも伝えておく事があるからです。
この前、そのコポが薬草を採りにきた時、少し試しました。まさに彼はタヌキ族の戦士の一人だったのです。
つづく
【第十話仙人タヌキのはなし】
あの日、確かに戦士を見つけたのです。
これで 戦える!あの狐族を追い出す事ができる。早くそうなって欲しい!と思っていたポポンは年老いた体に
鞭打って準備をはじめました。
コポポン山のあちらこちらから、薬草を採ってきてそれを調合しました。調合といっても人間とはちがいます。
ただちぎってまぜるだけですが・・・・・山の隠し穴から武器も取り出してきました。そして最後に山のてっぺんから
ねむの木の枝を折ってきました。
これですっかり準備ができました。後はコポ達を待つだけです。
長い冬が終わり、春が来ました。14歳となったポポンは、もうあたりの景色もみることすら出来なくなりましたが、
ただ一途にコポたちが尋ねてくるのをまっていました。
空高くうぐいすが大きな声で鳴きました。
「こんにちは、おいら コポです。」
やってきました ポコとコポの二人がいえ二匹が!ついうとうととしていたポポンですが、その声を聞いたとたん
寝ていた体をキっと起こし「おお、早くこっちへ!」と大きな声で答えました
ポコとコポはその声をきき、ポポンのところにやってきたのです。
ポポンには二匹のりりしい姿がはっきりと見てとることができました。
「おお 待ちかねたぞ!」「お前たちは あのポコンポ山へいくつもりで来たのか?」
二匹はただ黙ってうなずきました。
「そこに道具や武器はすべてそろえてある。それを持っていけ!」
「お前たちは、お前たちの生まれた時のことはすでに聞いたと思う。お前たちの親父様とおふくろ様は
とらわれの身となって牢屋に入れられていると思う。一刻も早く助け出してくれ。それに 多分あちこちからつれて
こられたものたちが奴隷としてつかわれておる事と思う。もちろんその中には人間どもいる事と思うが、われわれ
タヌキ族とは昔より仲が良いからついでに助けてやってくれ。」
「われわれタヌキ族にはその昔より風水の術を持つものがおる。わしもその一人だったが、
今はポン助というものがその力を受け継いでおる。だが、そのものは自分にそんな力があることを
多分知らないと思う。お前たちとちがってシッポが真っ赤だからすぐわかるじゃろう。
ぜひ探し出し仲間に加える事じゃ。」
「キツネ族の中に同じように赤いシッポをもったものがおるはずじゃ。そいつを見つけ出しシッポを切り取るがよい。
そうすれば もう風水は使えなくなるはずじゃ。もともとはタヌキ族のみに伝わる術、
他のキツネが会得することはない」
「コポよお前は戦士の力を授かっておる。ポコよお前は勿論統領としての力をもっておる。お前の統率力でぜひとも
にっくきキツネ族を倒してくれ。そして 二度とこのポンポコ島に立ち入らぬように追い出してくれ。」
「ゴホゴホ・・・・ポコンポ山にいくのにはおいそれとはいかぬ。
ここよりはるか北、ポンポコ山とコンポポ山の間を通り抜けコポンポ山に行くがよい。
そこに小さな洞穴があるのでその中に入るがよい。その洞穴のなかは迷路となっておるが、
そこを上手に通り抜けてくれ。もしそこでつまずくと、外に放り出されてしまうから注意しろ。」
「ゴホゴホ・・・・・・・そこを通り抜ければ、目指すポコンポ山じゃ。む!・・・・・」
「じさま!」
「ゴホゴホ・・・・・・大丈夫じゃ。ゴホゴホ・・・最後になったが、このねむの木を渡す。
これは向こうについたら使うのじゃぐるぐるとまわすとたいていのキツネたちは眠るじゃろう。
だがそれ以外のところでは使うな!皆寝てしまうからな。」
ポポンはあるたけの力を出し切りポコとコポに話しました。
二匹の若者はポポンの話を聞き終えコポンポ山へと向かいました。まずは迷宮を通り抜けなくてはなりません。
二匹のたくましい姿を瞼に焼き付け、ポポンは静かに深い眠りにつきました。
つぎへ
いががでしたでしょうか?
ここまで来たらあとは一目散にポコンポ山に向かうだけですが
お話の中にもあったように、コポンポ山は迷宮になっているみたいです。
本来ならばここで第十一話となるのですが、物語は迷宮を通らないと次に進めないような構成になっています。でもここでは、その構成通りに進めないので、「ポンポコ島ものがたりその2」として記述します。では、ポンポコ島ものがたりその2をおたのしみに。